「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「高慢と偏見とゾンビ」「SCOOP!」「アイ・ソー・ザ・ライ

kurawan2016-10-03

高慢と偏見とゾンビ
名作文学を元にゾンビが登場するという斬新なアイデアで描くいわゆるアクション映画であるが、思った以上に面白かった。特に冒頭の導入部のテンポが実にいい。監督はバー・スティアーズです。

ダーシー大佐が橋を渡る場面から映画が始まる。着いたのはある貴族の屋敷で、大勢がカードで遊んでいるが、ダーシーは死人ハエを放ってゾンビを見つけ倒す。そしてタイトルとともに、ゾンビがはびこるイギリスを舞台にした歴史が語られる。

画面が本編に移ると、五人の美人姉妹が暮らすベネット家に移る。ここの五人の姉妹が、近くに越してきたビングリーのパーティに招かれるが、そこでダーシーと出逢う。ところがそのパーティにゾンビが紛れていて、五人が一気に戦闘体制になり立ち向かう。この導入が実にかっこいい。

次女のエリザベスはいけ好かないダーシーを嫌うが、ダーシーは一目でエリザベスを見初めていた。しかしお互いの高慢と偏見の中で、疎んじているように敵対する。

やがてロンドンに閉じ込めていたゾンビたちがロンドンの壁を破りベネット家の娘たちが暮らすところへさまってくるという情報が入る。

一方、ゾンビと共存しようとする男ウィカムなども絡み合い、さらにゾンビ退治のレディキャサリンなどのカリスマも登場しながら、エリザベスとダーシーの恋物語がふつふつと描かれていく。

当たり前のように存在するゾンビの存在が実に奇妙でファンタジックで、結局、エリザベスとダーシーは結ばれるが、その結婚式の後ゾンビたちが襲ってくるシーンでエンディングになる。

スピーディな展開と音楽の挿入、カットの切り返しなど実にうまい。せっかくのレディキャサリンが存在感が弱いのが残念ですが、B級映画に近いテイストながら、ラブストーリーとしてしっかり作られているし、アクションシーンも手抜きがないから、最後まで楽しむことができます。ちょっとした佳作という出来栄えの一本でした。


「SCOOP!」
原田眞人監督の「盗撮 1/250秒」の再映画化であるが、素直に終盤胸が熱くなってしまいました。カメラワークのセンスがさすがにうまいと思えるのはオープニングから見られます。あとはハイテンポで次々と話が前に進んでいく。クライマックスがちょっと弱い気がしますが、なかなかの一品。監督は大根仁である。

主人公の静が車の後ろでカーセックスをしているシーンから映画が始まり、カメラがゆっくりと引くと、車がUターンして女が道を横切る。このオープニングが実にうまい。

静は中年パパラッチという感じのフリーカメラマンで、いつも持ち込む雑誌社で一人の新人、野火を任される。

こうしてこのいかにも不良な静と野火の芸能スクープを撮っていく姿がサスペンスフルに展開。やがて、殺人犯を撮る最初の見せ場へ。このシーンでみるみる存在感を出してくるのが滝藤賢一扮する馬場。静にはかつての相棒で、大きな借りのあるキャラ源という危ない男がいて、やたら強かったりする。しかし、薬をやっているようでかなり怪しい。

キャラ源が、久しく会っていない娘の家に行き、銃を撃ちまくって人殺しをし、静を呼び出すシーンがクライマックスとなる。静が野火を育てていくという展開がここでクライマックスを迎え、キャラ源をなだめていくうちに撃ち殺される静のショットを野火に撮らせて物語は大団円へ。

一人前になった野火が新人を従え、次のスクープを取りに行く場面をカメラがゆっくり俯瞰で鳥エンディング
うん、うまい。と思わず唸らせるカメラワークのリズム感が見事。前作などより少しクオリティは落ちるが、なかなか見せてくれる映画でした。ただ、静と野火の浪花節は考えようによってはちょっと平凡と言えなくもない気もします。


「アイ・ソー・ザ・ライト」
カントリー&ウエスタンの歌手ハンク・ウィリアムスの半生を描いた音楽映画ですが、どうもこの手の知識がないので、なかなか入り込めなかった。というより、トム・ヒドルストンの演じるハンクが生き生きと見えてこない。全体に普通の仕上がりにしか見えない一本でした。監督はマーク・エイブラハムである。

ハンク・ウィリアムスのことを語る眼鏡の男のシーンから映画が始まる。時は1944年、まだまだ無名のハンク・ウィリアムスはオードリーと結婚、二人でラジオで歌い始める。やがて子供が生まれるが、オードリーは歌手の夢を諦めきれず、一方のハンクは順調に歌手活動が進むにつれ、二人の間に溝ができ始める。

ハンクはアルコールに逃避するようになるが、実は彼には脊髄に持病があることがわかる。

女に溺れ、どんどん家族の絆が崩れていく一方、彼の体もボロボロになり、最後は彼の死で映画は幕を閉じる。

歌うシーンはさすがに猛特訓の成果もありリアリティ溢れるのですが、人間ドラマの部分が、どうも入り込めず、最後はこの手の伝記映画の常道のエンディングという感じでした。好きな人はのめりこめるのかもしれませんが、私には普通の映画でした。