「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マイ・ベスト・フレンド」「ガールズ・オン・ザ・トレイン

kurawan2016-11-23

「マイ・ベスト・フレンド」
これはかなり良かった。脚本が抜群にいいし、カメラワークのテンポが見事。それほど期待していなかっただけに、大満足で見終わることができました。監督はキャサリン・ハードウィックです。

主人公の二人ミリーとジェスが出会うシーンから映画が始まる。イギリスロンドンの学校にアメリカからやって来たジェスはすぐにミリーと仲良くなる。そして二人はどこへ行くときも行動を共にし、やがて二人はそれぞれ家庭を持つ。そしてタイトル。

映画はこの二人がそれぞれの夫婦生活と二人の友情の物語を中心に展開する。

できちゃった婚で幸せなミリーだが、間も無く乳がんが発見される。一方、なかなか子供ができないジェスは夫の勧めで体外受精を決意、そして妊娠する。

何かにつけ派手で、周りを巻き込んで騒動を起こすミリーは抗がん剤治療で次第に髪が抜け、嘔吐を繰り返す。そんな彼女を献身的に支えるジェス。この作品のいいのは、それぞれの夫が、妻の苦境に対しても、真摯で誠実でいい人であることである。

カメラは時に手持ちカメラのように人物によるかと思えば、フィックスで斜めに構えたり、美しいイングランドの景色を捉えたり、実に繊細で流麗である。しかもカットを細かくつなぐオープニングから実にリズミカルな編集を見せるのもこの映画の特徴と言えるかもしれない。

そして、ミリーは一旦、体調が戻ったものの、外科的手術で乳房を切除することに。さらに落ち込むミリーに、ジェスは妊娠したことを告げられないまま、400キロもの長距離のドライブに付き合ったりする。夫の戸惑う視線が耐えられず、バーの男性と情事を繰り返すミリーに愛想が尽きたジェスは一人ロンドンに戻る。そして二人の中は一時疎遠になる。

しかし、落ち着いたミリーはジェスの前に現れるのだが、すでに彼女の腫瘍は脳に転移し、余命僅かとなっていた。

ホスピスに移ったミリーを支えるジェス。やや不安ながらも順調に胎児は育ち、やがて陣痛が始まる。モルヒネで半ば朦朧としているミリーにジェスから連絡が入り、ミリーの母親の機転で、ホスピスを脱出、ジェスの病室へ。

この場面で、ここまでに登場していた脇役のタクシー運転手やミリーの母親が元女優だったという伏線が効いてくる。この脚本が見事。

そして無事出産、遠方に出稼ぎしていたジェスも戻る。ホスピスに戻ったミリーの傍にジェスが横たわる。懐かしい過去の思い出がミリーの脳裏に浮かび、ジェスに看取られて死んで行く。

映像の組み立ての見事さ、イングランドの景色、細やかに練られた脚本、なかなかの秀作に、ただ胸が熱く涙する作品でしたあ。本当に良かった。


ガール・オン・ザ・トレイン
体調が悪かったらかなりしんどいという感じの心理サスペンス。複雑に入り込んだプロットと映像、キャラクターが平坦に見えるために区別がつきづらい、いやそれが狙いかもしれないが、演出、そして、心の奥底にぐんぐんと入り込んで行ってしかも時間を遡る構成が相当なハードさで迫る。しかし、よくあるラストとはいえ、しっかりと演出されている点は評価できるサスペンスミステリーの佳作でした。監督はテイト・テイラーです。

一人の女性レイチェルが列車に乗って窓の外を眺めている。彼女の独り言のナレーションで設定が説明されて行く。彼女はどうやらアル中で、時折自分の記憶が飛んでしまうらしい。会社をクビになり、毎日同じ列車に乗っている。窓から見えるのは、かつて彼女が夫のトムと暮らしていた家の近所の夫婦の家。そこにはメーガンとスコットという理想的な夫婦が住んでいた。

レイチェルの夫トムはアナという女と不倫をし、一方、酔って失敗ばかりするレイチェルに愛想を尽かし離婚したのだ。

ある日、窓の外を見ていたレイチェルは、メーガンがベランダでスコット以外の男とキスしている場面を目撃、しかもその直後に、彼女は行方不明となり 死体となって発見されるのである。

レイチェルはそのことをスコットに話し、警察にも話すが、それがかえって、スコットに嫌疑がかかり、さらにレイチェルがアル中ということで、その証言さえも信じられないようになってくる。

物語は六ヶ月前に戻り、レイチェルが酔った勢いで繰り返す失敗の様子や、アナとトムの間に生まれた赤ちゃんを誘拐しそうになり、トムたちに接近禁止になる下りが描かれる。さらに、メーガンと不倫していた男は精神分析医らしいことが浮かび上がり、物語はさらに複雑に。しかも、メーガンは妊娠していたが、その相手は、精神分析医でもスコットでもないという。この辺りで、おそらくトムが犯人ではないかと思われてくるのですが。

実は、レイチェルはアルコールで意識を失って、幻覚のように見たのだと思っていたトムの姿、トンネルの場面が、実は、トムが最後にメーガンを車に乗せる様子だったのだと判明。さらに、これまで、酔って失敗して来たことは全てトムがレイチェルに吹き込んだもので、トムはDVでレイチェルを虐待、さらに女癖も悪いことが明らかになってくる。

こうしてメーガンを殺したのはトムと判明、レイチェルはアナとトムの家に行き、アナに逃げるように促すが、トムが現れる。全てを話すがレイチェルにトムは白状した上で、凶器を向けてくる。必死で逃げるレイチェルに迫るトム。そしてレイチェルにトムは刺し殺され、そのナイフをさらに奥までアナが突き刺す。アナもトムの本当の姿を知っていたのだ。

こうして、二人は逮捕され、正当防衛で釈放されて映画は終わる。
ぐったり疲れるラストシーンである。どこかもう少し整理したらもうちょっとわかりやすいサスペンスに仕上がったのだろうが、とにかく、グイグイと物語が複雑さを増すという構成は、体調が悪かったら、とても見ていられないかと思います。でも、よくできた面白い映画でした。


ブルゴーニュで会いましょう」
なんの変哲も無いたわいのない映画でした。普通といえば普通でしたね。監督はジェローム・ル・メールです。

ワインのテイスティングで評判の高い主人公のシャルリが、その才能で、テイスティングしているシーンに映画が始まる。一方彼の父親ブルゴーニュでワイナリーを経営しているが、倒産の危機に瀕していた。

父を捨てて出て行ったシャルリは、その噂を聞き、実家に戻ってくる。そして、経営再建のために、昔ながらの製法でワインを作ることを決意、職人たちの知識に助けられながら、やがて、ワインを完成し、立て直すまでを描く。

全くシンプルな話で、恋物語は挿入されるものの、大して物語に深みを与えるわけでもなく、淡々とすんでエンディング。そんな作品でした。