「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スモーク」(デジタルリマスター版)「人魚姫」「本能寺ホテ

kurawan2017-01-18

「スモークSmoke」(デジタルリマスター版)
ほぼ20年ぶりに見直しました。やっぱりいい映画ですね。大人の映画という空気が漂ってきます。最初に見たときは、まだ若かったので、この映画の良さは感覚でしか感じられませんでしたが、今回はじんわりと心にしみてしまいました。名作。監督はウェイン・ワンです。

タバコ店を営むオーギーの店に今日も客が様々な戯言を話しながらやってくる。親しい常連で作家のポールもこの店にやってきた。たまたま若者が雑誌を万引きしたので、追いかけるオーギー。

カットが変わり、ポールは通りをぼうっと歩いていて車に轢かれかけ、ラシードという黒人少年に助けられる。こうしてポールとラシードの物語が絡んで来る。

ラシードは、離れたところにある車の修理工のところに入り浸り、やがて雇われる。修理工というのは事故で片手をなくしていて、その経緯はかつて愛した女性を事故で死なせたこと。ところが実はラシードは彼の息子だったというエピソード。

さらにオーギーのところへ元妻が現れ、娘のところへ会いに行くエピソード。

そしてクライマックス、ポールにオーギーはかつてクリスマスの時に起こった出来事を話す。それを本にしているポールのタイプライターのシーンに、モノクロで物語が再現されてエンドクレジットがかぶる。この終盤がとってもいいのです。そしてエンディング。

本当に大人の物語ですね。オーギーが語る最後の話でカメラを盗む下りがあり、同じ場所で4000枚以上も写真を撮り続けているという冒頭のエピソードを繰り返す。

まるで、タバコの煙のように湧き上がってはどことなく消えて行く何気ない人生の様々なエピソードが、実に不思議な情景でスクリーンに再現される様は素晴らしいという他ありません。

色彩演出も巧みで、これほど綺麗な映画だったかと改めて感動してしまいました。やはり名作ですね。


「人魚姫」
とにかく、冒頭から抱腹絶倒です。環境破壊のリアルな映像にかぶって流れるのはなんと「ドラゴン怒りの鉄拳」のテーマ曲って、まず笑ってしまう。監督はチャウ・シンチーなので、大方これからの展開は予想がつく。

世界珍獣博物館なる奇妙な店の場面から映画が始まり、とにかく馬鹿騒ぎから一応人魚の説明。この下りがばかばかしいほど楽しい。

続いて、海の生物をソナーで排除して事業を計画している実業家のリウ。そのパーティに突然やってきたシャンシャン、実は彼女は人魚で、環境破壊をするリウを倒すために近づいてきたのだ。

こうして人魚族と人間族の物語が始まるが、いたるところに散りばめられるギャグまたギャグ、さらにCGを駆使した派手なシーンの連続はチャウ・シンチーらしさ満載で、笑いが止まらない。

抹殺計画が逆に恋に落ちてしまったリウとシャンシャン。その恋物語の下りはそれほどしっかり描けていないものの、ツッコミだらけのギャグシーンを楽しみながら、物語は大団円に向かう。そして、リウは海洋計画をやめ、慈善家として成功する。そしてシャンシャンと一緒に暮らしているラストでエンディング。

テーマが重いのに描き方は馬鹿騒ぎでくそまじめにとっているチャウ・シンチー流が最高の一本でした。おもしろかった。


本能寺ホテル
もっとつまらない映画かと思ったが、結構しっかり作られていて、最後まで真面目に見てしまった。監督は鈴木雅之である。

主人公繭子は、会社が倒産しどうしようかと思っているところ恋人の恭一からプロポーズされ、結婚をまじかに控えている。京都で恭一の両親の金婚式に呼ばれ、やってきたが予約ミスからたまたま見つけた本能寺ホテルに泊まることになる。

ところが、エレベーターに乗った繭子はホテルの古い時計の動きに操られるように突然本能寺の変の1日前にタイムスリップしてしまう。

物語は過去と現代を往復しながら、織田信長との出会いを通じて自分を発見して行く繭子と死を覚悟して本能寺の変に臨む信長に、彼の天下人としての本当の意図を語らせることで、厚みのあるドラマに仕上げて行く。

本能寺の変を告げたものの、死を覚悟する信長、自分のやりたいことは見えなかった繭子の奔走する姿に、恭一は一旦婚約を白紙にしようといい、繭子もまずは歴史の教師の登録をして前に歩むことにしてエンディング。

ホテルの支配人が繭子と同じことをして過去に行こうとするエピローグで暗転。

軽い娯楽映画としてでなく、人間ドラマを丁寧に描いたためにそれなりの作品に仕上がった感じです。予想外に良かった。