「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」「沖縄列島」「サー

「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」
これはものすごく良かった。軽妙に繰り返されるウィットの効いた台詞の応酬と映像転換の軽やかなリズムのコラボレーションが最高。しかも、演じる役者どれぞれが生き生きしていて、三歳の子役に至るまで物語の中で存在感を見せる。こういう大人のドラマが書ける脚本家に脱帽するし、見事に映像にする演出手腕に拍手してしまいました。監督はレベッカ・ミラーです。

主人公のマギーが友人の夫で友達でもあるトニーと会話している軽いタッチのシーンから映画が幕を開ける。背後に流れるリズミカルな音楽がこの作品の色を見せてタイトル。

マギーは子供が欲しいが男性との関係が今まで半年しか持たない。そこで、数学の才能がある友人のガイの精子を直接注入して妊娠する計画を立てる。折しも、一人の男性ジョンと知り合う。作家志望のジョンには妻子があるが、妻のジョーゼットは大学教授で、どうやらジョンのことをないがしろにしている鬼嫁という噂を耳にする。

そして、ふとしたタイミングでジョンとマギーはどんどん親しくなり、やがてジョンはマギーに愛を告白、三年の時が経ち、ジョーゼットと離婚したジョンはマギーと結婚、リリーという一人娘ができていた。

しかし、最近のジョンとマギーもどこか溝ができ、さらにジョンがジョーゼットと頻繁に連絡をとるし、ジョーゼットの子供達の面倒をマギーが見ているうちに、ジョンにはジョーゼットの方が向いているのではと考える。そしてマギーはジョーゼットと計画してジョンをジョーゼットに再度引き合わせよりを戻させるのだが、マギーの友達のトニーが口を滑らしジョンには計画がばれ、ジョンは家を飛び出す。

ここで、困ったマギーとジョーゼットにスパイスのような台詞を投げるのが、ジョーゼットのませた長女。ママ達に計画性がないといい、巧みにジョンとジョーゼットの仲を取り持って、マギーとジョンは何気なく別れ、元の状態になったかと思うスケートシーン。なぜかリリーは数学に興味があるようで、では、冒頭で失敗したかに思われた精子注入は成功していて、そこにガイがやってきて、彼を見つめるマギーのアップでエンディング。

もう拍手ものである。楽しい会話の連続と、脇役全員が挟むちょっとした台詞が物語にニヤつかせるユーモアとなって勢いをつける。しかも、ジュリアン・ムーア始めキャストの演技が半端なくうまいから、全員が個性的に浮き立ってくる。久しぶりにとっても楽しい映画を見ました。本当に傑作。

「沖縄列島」
1972年に沖縄が返還された。しかし、その返還前はどうだったのか?返還直前の沖縄を描くドキュメンタリーである。監督は東陽一。

米軍に弾圧され、抵抗するも日本政府さえどうしようもない当時の現実をストレートな映像で見せていく。現地の住民の生の声、抵抗しながらも生活のために歓迎する場面もかすかに描く。

こののち、数年後に日本に返還されるが、その背景には屈辱的な条件が存在することになる。そんな現実の数年前の映像を赤裸々に映し出した画面は、ある意味、有意義な映像と言えるのだろう。正直眠かったですけどね。これも映画ですよ。

サード
確かに傑作で四十年前に見たきりの作品で、それほど印象に残ってないのは、個人的な好みの問題のようです。物語の構成のうまさといいい、ストーリーの展開のテーマ性といい、さすがに隙間なく作られています。脚本は寺山修司、監督は東陽一です。

物語は少年院で繰り広げられる青春群像劇ですが、カメラを地面すれすれに配置しての走り回る青年を捉えるシュールなカットなど寺山修司色がいたるところに取り入れられている。

現代の物語にフラッシュバックで、ここに至る経緯や、主人公の心の葛藤などが映像として表現されている演出が見事で、一つの目的に向かっていく物語作りの一貫性が徹底されています。

それでいて、前半部分の導入部のエピソードのうまさや、中盤、女子高生売春を斡旋する主人公達のやるせない生き方の姿はこの時代頻繁に描かれていた若者達の無気力さなのかもしれません。

ラストは、ひたすら運動場を走る主人公の足のカットで、背後に、反対方向に走っていくという台詞がかぶる。

作品の完成度と当時の若者の生の心の姿を描き切ったというまぎれもない傑作ですが、ただ、個人的にはあまり好きではない映画です。

「ラブレター」
これは良かった。妖艶な中に狂気の愛を描いていく田中陽造の脚本が素晴らしいし、関根恵子がとにかく可愛らしくて愛くるしい。

中年の詩人に恋をしてしまった一人の若い主人公ウサギ、どんどんその男に惹かれ愛人という存在のまま日々を過ごす。時折やってくる男に身をまかせるシーンがとにかくエロティックで愛くるしい。

隣に未亡人が一人住み、その元夫が公園でブランコに乗っていて、ウサギが時々会話したりする。

ただ男を一途に慕うウサギは次第に狂気に包まれていく。そしてやがて、自殺未遂から一時は回復するも、男が隣の未亡人と関係を持つに至り等々精神が破綻、施設に行く。そこで完治した彼女に届いた知らせは男が死んだということ。

葬儀に出て、一人になった彼女は夜の公園で、例の男性とブランコに揺られエンディング。

とってもピュアな恋の物語が、キュートな関根恵子の裸体を通じて描かれる様がとにかく切ないほどに可愛らしい。本当にこういう映画大好きな映画です。良かった。