「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジムノペディに乱れる」「トッド・ソロンズの子犬物語」「

kurawan2017-02-02

ジムノペディに乱れる」
ロマンポルノリブート企画の一本で、これは行定勲監督作品ですが、普通の物語でした。でも、根底に流れる愛の物語という点ではやはり行定勲の視点は見えたからそれはそれで良かった気がします。

一人の男が窓のそばに立って隣で洗濯物を干している女を見ている。突然女が胸を見せ、自慰を始める。それを見る男、かつて海外の賞なども取った映画監督の古谷である。こうして映画が幕を開けるが、いかにも無理やりロマンポルノにした感じがちょっとあざとい。

彼は今、一本の映画を撮影している。しかし女優は文句を言って脱がないし、相手も気が乗らないと悪態を吐く。結局撮影は中止になる。

古谷は衣装担当の女と寝るし、映画学校の教え子結花とも、さらに、降板した女優安里とも寝る。次々と女遍歴をする古谷の姿が描かれていき、ただの女好きの映画かと思いきや、どこか古谷に影が見える。そこが行定勲の演出でろう。実は古谷には寝たきりで昏睡状態の妻がいる。

彼女を入院費のために元妻に娼婦まがいのことをさせて金を工面し、寝ている妻の前で看護師を犯して刺激しようとしたりする。全ては妻への愛であるかのように見えてくるこのくだりがなんとも切ないのだ。

一人、自宅に帰った古谷に結花が訪ねてくる。そしてかつて妻が弾いていたピアノに向かいジムノペディを弾くが、直後、結花は妻の姿を見たという。

虫の知らせと感じた古谷が病院に駆け出す。一方病院では心停止した古谷の妻に心臓マッサージが行われていた。必死で走る古谷のストップモーションでエンディング。つまり彼の愛を注ぐ目的は妻だった。切ないラストである。

小品ですが、どこか心に残したくなる一本でした。


トッド・ソロンズの子犬物語」
ブラックユーモアなのか風刺なのか知らないが、いかにも表現が下品でしつこい。もっと演出の仕方があるだろうにと言える場面も多々あり、あまり楽しめなかった。監督はトット・ソロンズ。

一匹のダックスフンドが息子へのサプライズプレゼントで、ある金持ちの家にやってくる。息子は癌だったらしいが、なんとか回復している。

避妊手術をし、普通に生活を始めるが、両親が留守の時に息子はこの犬に子供のお菓子を食べさせる。それが良くなかったのか、お腹を壊す犬。どうしようもない描写が延々と映像になり、結局、安楽死させることに。この短絡的な決断もなんとも言えないが、下痢を起こした犬の糞を延々と捉えるカットにうんざり。

安楽死させる部屋から看護師が連れ出し、犬は転々と人を渡り始める。最後はとある金持ちの老婆、(なんとエレン・バースティン)のところへ。そこで何やらシュールな演出で少女がたくさん現れ、気がつくと、傍の犬がいない。どこへ行ったかと探すとハイウェイに出て言って車に何度も轢き殺される。ここもしつこいし、ブラックに品がない。

老婆の孫の彼氏がアーティストで、この犬のロボットのようなディスプレイを作っていて、ワンと鳴いてエンディング。

途中退屈で眠ってしまうし、まぁ、見る必要があったのかというレベルの一本でした。


「うれしはずかし物語」
これはすごく良かった。大人のファンタジーです。とってもリズミカルな展開と背後に流れるクラシックが絶妙のコラボを生み出して、コミカルでちょっとエロティックな物語がとっても爽やかなのです。大好きな映画の一本になりそうな気がする。特に川上麻衣子がとってもキュートで可愛らしい。監督は東陽一。

中年男の三国裕介は一人になる時間が欲しくて小さな部屋を借りた。たまたま街でチャコという少女を誘ったところ、ついてきたので、戸惑いながら楽しい会話を始める。映画はその場面から始まる。とにかく寺田農扮する裕介もいいし川上麻衣子扮するチャコもいい。チャコは毎週金曜だけ裕介の愛人になるといい、契約を結ぶ。

裕介はチャコに払うお金もあり、古いアパートに部屋を替える。一方裕介の妻和歌子は、イタ電でかかってきた若者といつの間にか浮気を始める。なんとその若者のアパートは祐介が借りた部屋の向かいだったが、いつも抱き合う時は顔が隠れていてわからない。

祐介たちの子供達は今まさに受験真っ最中ながら、妙に明るい。つまり家庭の中は実にほっこり描かれている。一方で外に出れば夫婦お互いに恋のアバンチュール。この構図がとってもファンタジックで楽しい。

しかもそれぞれの会話の受けが絶妙なので、そのコミカルなリズムも最高。
いたるところに散りばめられた伏線も面白いし、丁寧に寝られた脚本の妙味も楽しめます。

最後はお互いの浮気がバレて、それぞれ大人の別れと夫婦がほっこりと元の鞘に収まり、子供の受験もハッピーエンド。

エピローグ、元の生活に戻った祐介も街でチャコと会って明るい挨拶をして、チャコの後ろ姿でエンディング。本当に爽やかな佳作というイメージの一本でした。良かった。