「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クリミナル 2人の記憶を持つ男」「素晴らしきかな、人生」

kurawan2017-03-01

「クリミナル 2つの記憶を持つ男」
娯楽映画としては非常によくできた映画で、素直に最初から最後まで楽しむことができました。監督はアリエル・ブロメンという人です。

主人公ジェリコが佇んでいるカットから少し時間が戻る。ビルという男がとある店で大金の入ったカバンを受け取り、そのまま店を出るがその後拉致され、拷問の末息絶える。この男からダッチマンという男の行方を聞きだそとしている政府組織。ダッチマンはアメリカの軍事兵器を自由に操ることができるソフトを作っていた。

最先端の脳外科手術でビルの記憶を転写されたのは、非情な極悪人のジェリコジェリコはビルの記憶を持ったまま、逃走する。それを追うCIA、さらにダッチマンからソフトを得ようとするロシア組織などなどが三つ巴の追跡線を繰り返すのが本編。

ビルの妻の元に身を隠すジェリコは、そこでビルの妻への記憶も蘇り、娘エマへの愛情も覆いかぶさってくる。アクションのみでなく、恋愛ドラマも切なく挿入している脚本の練り込みが実にうまい。

結局、ダッチマンも殺され、ジェリコは人質に取られたビルの妻とエマを助けるためにソフトを渡すが、最後に細工をしていて、最初のミサイルは操作したターゲットに向かうようになっていて、無事軍事ソフトは破壊されてしまう。

CIAらはジェリコにビルの妻との生活を与え、ハッピーエンディングで締めくくる。
素直に楽しめるなかなかの仕上がりのアクションエンターテインメントでした。面白かったです。掘り出し物発見ですね。


「素晴らしきかな、人生」
これは無茶苦茶に良かった 細かい伏線もしっかりしているし、会話の展開、映像のリズムそれぞれが綺麗にコラボレーションしている。導入部のファンタジックな流れが最後まで全く揺れることなく、どんどん物語の核心に引き込んでくれます。最高に胸が熱くなりました。監督はデビッド・フランケルです。

主人公ハワードが会社に貢献し、成長の立役者として存在している賑やかなシーンから映画が幕を開ける。そして三年、ひたすらに卓上にドミノを作っていくハワード、そしてそのドミノを倒して会社を去っていく。

6歳の娘を亡くし、茫然自失になり、何もかもに無気力になった日々を送る彼の姿に、ホイット、クレア、サイモンら同僚たちが心配。会社の命運も目の前に迫ってくる中、彼を立ち直らせようと、たまたまハワードが出した愛、時間、死に当てた三通の手紙をポストから抜き取り、三人の舞台役者にそれぞれを演じてもらってハワードの近づくという大芝居を計画する。

物語は次々とハワードのそばに近づく三人の役者たちが演じる、愛、時間、死に対する言葉の数々。物語はこの展開が中心だが、ハワードはいつも、子供を亡くして語り合う会に参加することを始めていた。

そこの主催の女性はそんなハワードに優しく接して、人生を再度歩み始めるように語りかけ続ける。彼女の名前はマデリン、彼女もまた娘を亡くしていた。

ストーリー展開は単にハワードの物語だけでなく、不倫が元で離婚し、娘に嫌われているホイットニー、母になりたくて精子ドナーを探すクレア、不治の病で余命いくばくもないのに苦しんでいるサイモンとそれぞれ、愛、時間、死を演じた役者との物語も描かれている点である。

この3つの物語とハワードの物語が絡み、やがて役員会でハワードの解任が決まる。それは、同僚たちのハワードへの優しさであるようにも見えるのがまたいい。

全てがなくなり、しかし何か未来が見え始めたハワードはマデリンの家を訪ねる。マデリンはハワードを迎え、死んだ娘のビデオを見せながら娘の名前を言うように迫る。ビデオに映るのはなんとハワードと娘が仲睦まじく遊ぶ姿だった。そうなのです、娘を亡くして、妻と離れ離れになったハワードの妻こそマデリンだった。こうして再び二人は結ばれ、前に歩みはじめる。

同僚の三人もそれぞれの役者に語りかけられ、前に進み始める。公園を歩くハワードとマデリン、二人を見送る三人の舞台役者、マデリンが振り返るとそこには誰もいない。かつて娘が死ぬ時病院でマデリンに語りかけてきた婦人は死を演じた役者だったと言うエピローグも入る。胸がいっぱいになるラストシーンです。たまりませんね、本当に良かった。


「秘密の子供」
お互いに惹かれながらも、どこか隙間のある恋人通し、そんな二人がその隙間を埋める手段は麻薬しかなく、どこか壊れていく恋人通しのなんとも言えない切なさを描いた作品。監督はフィリップ・ガレルです。

淡々と繰り返す映像、キスシーンもベッドシーンも繰り返すのに、どこか主人公二人にすれ違いが見える。カメラは常にそれぞれを捉え、1つに捉えるカットもどこか第三者的に見える。

ストーリーがシンプルすぎるので、派手な展開になれるとなかなかの入り込めませんが見終わってみると不思議な感覚が蘇ってきます。感性で描き切るフィリップ・ガレルの演出の卓越さを証明するような一本、好き嫌いはあるかも知れないけれど、映画とはこう言うものじゃないかと思うのです。