「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「メッセージ」「たたら侍」

kurawan2017-05-22

「メッセージ」
典型的なハードSFである。冒頭のシュールな映像から世界中に突如現れた未知の物体、そしてその中の生物との接触からラストシーンへ。ひたすら心理ドラマのような感性の世界が展開していく。一見、壮大なドラマのようで、実は心象世界のお話に時間という概念が絡んでくる。圧倒されるのだが、理解の仕方は人それぞれになるという傑作の一本という作品でした。監督はドゥニ・ビルヌーブです。

主人公のルイーズが赤ん坊を生んで育て、やがて成人したものの何やら不治の病にかかったのか息をひきとる。カットが変わると彼女は大学で言語学の教授で、講義のために教室へ来たが、学生たちの声にニュース画面を開いてみると、世界中に未知の物体が現れたというニュースが流れる

間も無くして、ルイーズのところへアメリカ軍からの要請が来る。飛行物体の中にいる未知の生物と接触し会話するためにルイーズが選ばれたのだ。

そして、物体のある地へやって来たルイーズは数学者のイアンと一緒に接触を試みる。

物語は彼らが未知の生物の映し出す図形を言葉として判読していくのを中心に展開するが、時折ルイーズは一人の少女ハンナの夢というか幻覚を見る。時折、その少女は誰なのというセリフがかぶるのですが、明らかに冒頭に出て来た少女である。

少しづつ明らかになる生物の言葉。そして、何かを与えるというような意味であることがわかるが、それを他国は様々に解釈し、中国は軍事行動を起こすことを決意したような連絡が入る。

刻一刻と迫る全面戦争の期限だが、ルイーズはすんでのところでイアンのヒントで、未知の生物が伝えて来たことがわかる。それは「3000年後、我々には人理が必要になるから、今人類を助ける」というような内容だった。そして12に分けられた知識が披露されるが、それを一つにするためには世界中の国が協力しなければならないことがわかる。

そして、ルイーズは中国のシャン将軍を説得するという未来が見え、衛星電話でシャン将軍を説得、世界中が一つになって全ての情報を共有、未知の生物の知識がまとめられる。その結果を見て物体は霧のように消えていく。

エピローグ、ルイーズの傍に赤ん坊のハンナ、そしてその父親こそイアンであるというラストでエンディング。

人間にとっては時間は流れであるが、未知の生物にとっての概念は違うというテーマが語られていくラストシーンとなる。

結構シュールでハードな話なのに全く退屈しない。物語の展開がうまく構成されているのと、カメラがときおり大きな画面で捉えるリズム感がうまいのだろうか。いずれにせよ、抜きん出た作品であることは確かである。


たたら侍
非常にオーソドックスな時代劇、いまどきこんなのを作ったという勇気に賛辞を送りたいが、いかんせん作品としては非常に凡作だし、とにかく、脚本が非常に雑なので、物語が全然広がって来ない。監督は錦織良成である。

出雲奥地にある良質の鋼を生み出す村を舞台に、戦国時代の乱世の片隅の人間ドラマを描いた作品。一人の少年が住む村が侍に襲われ、斬り殺されていく場面から始まるが、余計な斜めの構図を多用したカメラ演出にまず辟易としてしまう。続いて、その村で鋼を打つ頭領が次の代に地位を譲る場面から映画が始まる。

時は戦国時代、織田信長が乱世を駆け抜けていた時代で、やがて、この村が織田信長に襲われるという噂が飛び込んで来る。村の若者の伍介はそれに対抗するべく、気のいい商人に相談し助けを求めるが、この商人はこの村の良質の鋼を手に入れることだけを考えていただけだったという展開。

ありきたりな物語と、雑なエピソードの挿入、殺陣も下手くそやし、見ていられないほどに凡作である。

結局目が覚めた伍介が改心して、それなりの犠牲を伴ったのち、ハッピーエンドだが、ここまで引っ張ってこの程度かという作品にがっかりするだけでした。明らかに「七人の侍」を意識したストーリー構成ですが、と言って真似をした部分だけが目立つ映画で、一体どういう意図なんだろうと思える安易な作品だった気がします。