「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「河内カルメン」「悪太郎」「関東無宿」

kurawan2017-05-23

河内カルメン
これは傑作。二度目の鑑賞でしたがやはり素晴らしい。
リズミカルに展開する映像世界始まるがまさに鈴木清順美学の極地である。鏡が回転して人物がくるくる回ったり、仰々しいライティングや舞台セットのような演出、さらに完全に書き割りしたような配置と構図。こんな面白い映画があったかと思える一本です。

主人公の露子が颯爽と自転車に乗っているお尻のアップから映画が始まる。口に薔薇をくわえていかにもカルメン風。河内の田舎で暮らす露子は若者たちに強姦されたのをきっかけに大阪にいく。そこでキャバレー勤めをして、貧乏なサラリーマンと同棲、さらにモデルになりと次々と男を変えながら、たくましく生きていく。

抜群のプロポーション野川由美子全盛期の姿に惚れ惚れしてしまいますが、ストーリーと映像展開の妙味にどんどん引き込まれ、やがて東京へ行く決心をして映画が終わる。いやぁ何度見ても面白かったし、こんな映画を作りたいと思わせる魅力溢れる一本でした。


悪太郎
これは面白かった。痛快というか爽快というか、見ていてどんどん引き込まれてしまう。もちろん鈴木清順監督らしい影を使ったシーンやジャンプカットのよな編集など見せてくれるし、お話も面白いし、終盤はちょっと唐突ではあるけれど、じわっと感動してしまいました。原作が読みたいです。

主人公の東吾が神戸の名門中学を追い出され城崎へ母と向かう途中で豊岡の知り合いの中学の校長の家に預けられるところから映画が始まる。

持ち前の度胸と機転で、次々と危機を乗り越えて行く痛快さから、後半恋に落ちてやがてその風紀を咎められて東京へ行くが一年後、恋人の死を知って映画が終わる。

けんかえれじい」に通じるバンカラもののおもしろさと、淡い青春のラブストーリーを絡ませた物語に鈴木清順独特の映像作りが絡み、なんとも言えない世界観の中でスクリーンにのめりこんでしまいます。大傑作とまではいかないまでも、古き良き日本映画のとってもいい作品に出会ったという感じでした。


関東無宿
徹底的な様式美で見せる鈴木清順監督らしい任侠映画。木村威夫の美術も抜群に美しいし、あざといくらいの映像演出がとにかく楽しい。

三人の女子高生がきゃっきゃと盛り上がっている。どうやら一人の娘の父親はヤクザの親分のようで、しかも別の一人はヤクザに興味がある様子。いきなり破天荒な設定から始まる任侠映画にまず、唖然としてしまう。

しかし、この後の本筋は徹底的な任侠の世界観で、壁が倒れたら真っ赤に染まったり、任侠映画の定番の雪の降るシーンがあったり、時にシンメトリーに時に奥行きのある構図がとにかく美しい。

二組の組の確執が一人の古風な渡世人を中心に、その周りの女性たちとの因果のある恋物語なども語られ、賭場のいかさまの説明などのこだわり場面などもあって、娯楽性も十分。

ラストは切った張ったのシーンから、組を守るための渡世の義理を果たしたものの裏切られ、やるせないシーンでエンディング。

一見王道のヤクザ映画なのに、よく見ていると型破りな演出が施されている。鈴木清順美学の虜になる一本だったかなと思います。面白かった。