「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ボン・ボヤージュ 〜家族旅行は大暴走〜」「アリーキャッ

kurawan2017-07-26

「ボン・ボヤージュ〜家族旅行は大暴走〜」
宣伝で見た通り、かなりの出来栄えのエンターテインメント。こういう映画の作り方もあるもんだと思い切り楽しめました。今はやりのアクションカメラを使ったハイウェイの疾走シーンが抜群にスピード感があって面白いし、ラストの畳み掛けも見事。娯楽映画の常道通りのストレートな面白さを満喫した。監督はニコラ・プナム。

整形外科の夫を持ち二人の子供と臨月の妻を養うコックス家族。主人がベッドで目を覚まし、これからバカンスに行くぞと張り切る場面から映画が始まる。いかにもな真っ赤なスーツや調度品、真っ青なシャツなど、フランス映画的なサイケデリックな色彩配置からしていかにも現実離れした演出から引き込まれる。

最新のコンピューターシステムを搭載したミニバンに乗り込んだ家族に、お騒がせの義父も同乗、いざ出発。途中のドライブインで拾ったヒッピー風の女の子も加わって楽しいはずのドライブが始まるが、いつの間にか車のスピード制御が効かなくなり、どんどんスピードアップ、190キロまで上がったうえにブレーキも効かなくなる。

ここに、ハイウェイパトロールのオートバイ警官二入が絡み、さらに途中でドアを吹き飛ばされたBMWに乗るキレた男も加わって、ハイウェイでスピード感あふれる逃走劇が始まるのだが、60キロ先に渋滞が起こっていることがわかり、突っ込むまでのタイムリミットが設定される。

全ての設定が完了して、あとはアクションカメラによる地面すれすれのスピード映像や、超広角のハイウェイシーン。みるみるスピードを上げて来るBMWやハイウェイパトロールのバイクの疾走感が爽快なほどに面白い。

しかも車内では、義父と妻や子供達の丁々発止の会話劇が繰り広げられ、緊張感が高まっているのか自暴自棄ではしゃいでいるのかの境目を吹っ飛ばす展開が続く。さらに、整形外科の患者の副作用で喚く連絡や、車のディーラーの展示車がhぐあいになってセールスマンがクビになって行く経緯や、このあっけらかんと割り切ったストーリーテリングも最高。

そして、いよいよ渋滞が間近に迫り、まず警官二入が車で並走して子供たちを助け、さらにヘリが到着してサンルーフから妻を助ける。しかし渋滞まで間に合わないと判断した救助員は車ごとヘリを吊り下げる。そして間一髪、渋滞直前で車は釣り上げられて大団円。

まるでハリウッド映画の「スピード」を思わせるような展開で、パニック映画さながらのクライマックスもうまい。

エピローグで、妻は出産、そこに担ぎ込まれたBMWの男は途中で事故になって重症で車椅子でまだ追っかけて来るし、整形外科の手術の失敗で腫れ上がった老婦人は悪態をついているし、散りばめられる脇役のエピソードも楽しめる贅沢な作りになっている。

一級品の娯楽映画で、規模こそ、アメリカ映画に及ばないかもしれないが、車内の閉鎖空間からハイウェイの動く映像世界へ、さらに、渋滞の人々が一気に避難して俯瞰で見せる大きな画面へと、物語のサイス変化も実にうまい。久しぶりに堪能するほどによくできた一本でした。


「アリーキャット」
もう少しつまらない映画かと思ってましたが、結構楽しんでしまいました。窪塚洋介の相方をした降谷建志がいい味を出しているので映画が深みが出た感じです。物語は少々くどいので、もう少しバッサリ切るところがあればスッキリと仕上がった気もするけど、あれはあれでいい空気感を持っていたように思います。監督は榊英雄である。

飼い猫が行方をくらまし、探している主人公朝秀晃のシーンから映画が始まる。見つけたと思った飼い猫のマルは実は猫違いで、保健所に行くとたまたまマルをもらいうけた梅津と出会う。彼はその猫にリリィと名付け、そのままお互いの呼び名になる。

ある日、ストーカーから守ってもらうというボディガードの仕事をすることになったマルは、その対象の冴子をガードしている喫茶店でリリィと再会、たまたま冴子が交渉していたストーカーの玉木が異常な行動になってきたので、取り押さえたため、警察沙汰になってしまう。さらに、玉木は腹いせに冴子が消してほしいと望んでいたデリヘル時代の動画をばらまかれ、冴子が居場所を知られてはいけない人物に居所を突き止められる。

あれよあれよとストーリーがでかくなって行くのがやや不自然ですが、その流れで、マルとリリィは冴子を守る羽目になるのが本編。

どうやら過去に政治家と関わりを持ったことのある冴子、さらにその関係を計画していった経営コンサルタントという闇社会の男とも関わりを戻して行く。無理やり感のある展開ながら、サスペンスとして楽しめるあたりはまぁまぁのできなのだろう。

結局、ストーカーの男も行動がエスカレートして、とうとう冴子の関係のあった政治家さえも最後は殺してしまい、マルも瀕死の重傷を負いながらも冴子を助け出して夜の街へ消えて行く。

エピローグは冒頭に戻って、何事もなく日常が始まるというマルの部屋でエンディング。もうちょっとストーリーの組み立ての意整理をしたらかなり面白い秀作になりそうな作品ですが、役者それぞれが存在感抜群に飛び出して来るのがなかなかの一本。おもしろかった。