「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「地獄の曲り角」「海底から来た女」「嵐の中を突っ走れ」

kurawan2017-08-01

「地獄の曲り角」
わずかなツッコミどころはあるとは言え、なかなか面白い犯罪映画でした。娯楽の本質を分かった人が作るとこうなるという典型的な仕上がりがみごと。監督は蔵原惟繕です。

しがないホテルのボーイたちが、ダイス賭博で遊んでいるシーンに始まりタイトル。やって来る客のスキャンダルをヤクザに流して、わずかな金をもらいながら生きる主人公だが、ある夜、一人の男が殺され、そのホテルの部屋で半分に破られた鍵を発見隠し持つ。

間も無くしてその片割れを持つらしい男の情婦が現れ、その女と関わりながら、次なる大金を狙い始める。一方でテープレコーダーにホテルの客の色事を録音してはゆすりを始め、次第に羽振りが良くなって来る。

鍵は、郵便局の私書箱のもので、そこに政治家がらみの裏帳簿らしいものが隠されているらしく、刑務所に入っている、もう半運の鍵を持つ男が出所してきて、その鍵で帳簿を手に入れ、出てきた男はつけられていた何者かに追われて消えてしまう。どこ行ったん?

そして手にした帳簿で政治家らしい男たちを呼び出し金を手に入れたものの、女に裏切られまんまと金を横取りされ車で逃げられる。一方で、主人公にはめられたヤクザが恨んで車のタイヤに細工をしていたので、その車ごと逃げた女は事故で車が炎上。中においていた金も燃えてしまう。

主人公は何もかも失敗。恋人に預けていた原本の帳簿が警察に渡され警察も動き出してエンディング。

いたるところにツッコミどころというか、尻切れとんぼで終わるエピソードが散りばめられている仕上がりがなんとも適当だが、主人公のみをみていればそれなりに面白い。こういう作り方も通っていたという典型的な映画黄金期の一本。楽しめました。


「海底から来た女」
なんとも不思議な映画です。
土着民の古の言い伝えの物語のようで妙に西洋風ななファンタジー色がある。監督は蔵原惟繕

海辺の別荘にやって来ている主人公たち若者が騒いでいるシーンから映画が始まる。主人公のヨットに食い散らかしたような生魚があるので、怒った主人公が掃除に早朝やって来ると、半裸の女性が寝そべっている。そして、日が変わると突然、主人公の部屋にいるのである。

地元の漁師の若者が行方不明で死んだというエピソードが絡み、どうやらこの女はフカの化身であるようで、不思議なあらわれかたをするのだが、いつの間にか主人公はこの女性に惚れていく。この女自体が不思議だなと突っ込んでしまう。

主人公が山に遊びに行ってる時に兄がやって来て、居合わせた女とヨットにで海に出て、突然の嵐で兄が死ぬ。そして戻って来た主人公が女と再会。しかし地元の漁師はその女をかつてこの村に伝わるフカの化身だと決め、待ち伏せして襲い掛かり、女は何処かへ消えてしまう。

やがて夏休みも終わり、主人公は未練はあるものの東京へと帰ってエンディング。当時としてはなかなかの水中撮影だったのだろうが、今見ればそれほどでもないし、フカの化身の女もこれというほどの美貌でもプロポーションでもない。ちょっと話題性の作品という一本でした。


「嵐の中を突っ走れ」
たわいのない話。これといって取り上げるほどでもない典型的なプログラムピクチャーの一本という感じですが、当時の空気が思い切り伝わって来て、すごくいい気分になることができました。映画が娯楽の王様で、ふらっと立ち寄った映画館に大スター石原裕次郎が暴れまわっている。そして、適当に出てまたブラブラと歩く。古き良きと言えばそれまでかもしれませんが、とっても楽しむことができました。監督は蔵原惟繕

一人の熱血教師の主人公。石原裕次郎扮する教師が颯爽と体操や乗馬や喧嘩をして物語が始まる。そして、喧嘩が元で大学の助手をクビになり、館山の漁村へ。そこの女学校の教師になり、生徒たちにモテモテのくだりから、地元の漁業実験の裏を暴いていくというなんとも適当な展開でどんどん大活躍の石原裕次郎

悪者はやはり地元の組合長であったり、何やら真面目な学者が出て来たり、漁師に見えない漁師が最後は立ち上がり、愚連隊らしき男どもと大げんか。すべて丸く収まり、去っていく石原裕次郎を見送ってエンディング。

いいなぁ。これが本当の映画なんじゃないかと思います。古き昭和の一時代が伝わって来るような空気感に酔いしれてしまいました。