注目作「ヘブンアンドアース」、ついに「キル・ビル」ＤＶＤに

Cinema-Topix

「ヘブンアンドアース」が２１日より公開が始まった。

　たぶん日本では中井貴一の出演が話題なのだろうが、中国映画のファンなら「双旗鎮刀客」（90）と「哀戀花火」（93）のフー・ピン（何平）監督の久しぶりの新作として、懐かしさとともに“けれん”の味を存分に楽しめるに違いない。

　フー・ピンは1957年生まれ。文化大革命で下放を体験してはいるが、チェン・カイコーやティエン・チュアンチュアンら第五世代より少し下の年代。彼らの政治性から逃れて主に90年代に輩出した第六世代とも馴染まぬ独自の個性を持っている。赤い土埃舞う西域を舞台にした「（荒野の）用心棒」みたいな西部劇「双旗鎮〜」も、老舗の爆竹屋を継ぐ男装の麗人と旅の絵師の情熱的で切ない愛の物語「哀戀〜」も、当時の中国映画のイメージを心地よくぶっ壊すイキのいい娯楽作だった。

　そして今回は、恋の気分もさらりと盛り込みながらの、男の友情と絆の物語。「双旗鎮〜」が閉ざされた宿場町を舞台にしていたのに対し、こちらは（キャトルならぬ仏教経典の）トレイルの道中で展開する西部劇である。

　時は唐が栄えていた紀元700年ころ。二人の男が遭遇する。今は逆賊となった元唐軍の英雄と、皇帝から彼の殺害を命じられた遣唐使（中井貴一）。二人はなりゆきで、若い僧が経典の中に〈仏舎利=釈迦の遺骨〉を隠して運ぶ駱駝のキャラバンを長安まで護衛することになる。これを狙う西域の異教徒と残忍な盗賊一味を相手に戦う、多勢に無勢の絶望的なミッション。砂漠の真ん中で追いつめられた一行が円陣を組み、その周りを敵が馬に乗ってぐるぐる回るシーンなど、インディアンの駅馬車襲撃そのものだ。まだ錆びついていなかったフー・ピンのアクション演出はいかにもハイ・テンション。無茶な特攻精神や城に立てこもっての死闘など、こうまで悲壮にしなくても、と思うほどだ。

　それでもなお、圧倒的なスペクタクル感をもって見る者の気分を高揚させるのはシルクロードの美しく雄大な映像。猛烈な砂嵐や灼熱の乾きなど、砂漠の過酷さが映画の中のキャラバンだけでなく映画の撮影隊をも苦しめたことが容易に想像できる。実は、ほぼ半年にも及んだロケは零下20度の酷寒の中で行われたという。監督自らが15年の構想の末に書き上げた脚本が少々荒っぽくて、時おり“大胆すぎる省略”があるのは、もしかするとその辺に起因するのかもしれない

公開作品・公開待ち作品紹介

ヘブン・アンド・アース

[監][脚]フー・ピン　
[総]ソン・タイほか　
[脚]チャン・ルイ　
[撮]チャオ・フェイ　
[出]中井貴一　チアン・ウェン　ビッキー・チャオ　ワン・シュエチー　ハースパーカン　フータオ　

[制作データ] 2003中／ソニー
[上映時間] 118分

　

フー・ピン監督作品
・戦争を遠く離れて 1987
・三国志　第一部大いなる飛翔

中井貴一関連作品

・連合艦隊 1981
・ふしぎな國・日本 1983
・プルメリアの伝説　天国のキッス 1983
・男はつらいよ　口笛を吹く寅次郎 1983
・父と子 1983
・Ｆ２グランプリ 1984
・化粧 1984
・ビルマの竪琴(1985) 1985
・食卓のない家 1985
・キネマの天地 1986
・国士無双 1986
・鹿鳴館 1986
・新・喜びも悲しみも幾歳月 1986
・映画女優 1987
・竹取物語(1987) 1987
・極道渡世の素敵な面々 1988
・激動の１７５０日 1990
・東京上空いらっしゃいませ 1990
・極道戦争・武闘派 1991
・外科室 1992
・お引越し 1993
・結婚(1993) 1993
・忠臣蔵　四十七人の刺客 1994
・マークスの山 1995
・Ｍｏｒｏｃｃｏ　横浜愚連隊物語 1996
・ジャングル大帝 1997
・ラブ・レター 1998
・落下する夕方 1998
・残侠　ZANKYO 1999
・梟の城
・新撰組 2000
・世にも奇妙な物語　映画の特別編 2000
・日本の黒い夏　冤罪 2000
・みんなのいえ 2001
・ホタル 2001
・修羅の群れ