日本映画史屈指の傑作にして天才山中貞雄監督の数少ない(三作品しかない)現存するフィルムのうちの一つを本日ようやくスクリーンでみる機会を得ました。
とにかく、私のようなレベルの低い映画ファンにとってはうまく解説も感想も書ききれないのですが、画面づくりといい、場面展開といい、非常に重厚で奥行きのある作品でした。
スタンダードサイズというのに非常に画面が大きく見えるのです。絵画においても良い絵画になればなるほど大きく見えるのと同様、非常に大きな作品という感想でした。
物語は百万両の隠し場所が塗り込められた壺を巡って展開するいわば喜劇タッチの作品で、丹下左膳映画としては番外に位置するものです。しかしながら軽妙なセリフまわしとそれに伴う場面展開のうまさは絶品で、さすがに屈指の傑作と言うべき映画ですね。
剣豪丹下左膳の殺陣のシーンは数少ないけれども、(現実にクライマックスのシーンはほとんど現存していない)そのシーンは見事であり、前後のコミカルなシーンの連続と展開はその見事な組み立てに完成された映画の貫禄があります。
また、大河内傳次郎は本当に名優でありことがこの作品で納得しました。その視線の使い方のうまいこと、さりげない仕草の見事なことはただのスター俳優ではなかったのだと感心してしまいました。
もちろん殺陣も見せてくれるし、申し分のない大俳優であったのだと改めて感心してしまいました。
丹下左膳餘話 百萬兩の壺 大河内傳次郎 林不忘 山中貞雄 by G-Tools |