1936年のフランク・キャプラ監督の名作。主演はゲーリー・クーパーとジーン・アーサー。
モノクロームとはいえ天才監督フランク・キャプラの毒のこもった社会風刺は絶品であった。
冒頭部、一台の車が猛スピードで走っている。何度かのカーブを曲がったあと、ガードレールをつき破って崖下へ・・・
場面変わって、新聞の見出しがでかでかと大富豪センブル氏が事故で死んだ記事がでる。そして、その莫大な遺産を誰が相続するのかセンブル氏の顧問弁護士たちが画策する。実は彼らはセンブル氏のお金を横領しているのだ。何とかごまかす必要に迫られ、相続人探しをする。そして現れたのがいとこのディーズ(ゲイリー・クーパー)である。
さて、ここまではなかなか物語に入り込みにくいのであるが、このディーズ氏、なかなかの切れ者で、当初登場したときは田舎ものの脳天気な男かと思いきや、都会へでて、強者どもの中にはいるとずばずばと本音を見抜き、決して一筋縄でいかないところが見え始めたあたりから、次はどうなるのかとすっかりはまりこんでしまいます。
あとはもう、ヒロイン、ベイブ(ジーン・アーサー)が登場し、言葉巧に取り入りながら、特ダネをものにしていくのですが、なぜか女性の正体は見抜けないところが心憎いですね。結局、このことが物語のクライマックスで裁判沙汰に発展していく下りへとつながってしまいますが、所々に痛烈な社会風刺が盛り込まれていて、さすがキャプラとうなってしまいます。
思い切り笑わせるのではなく、にんまりとさせられてしまうキャプラ流のコメディはもうここに来て天才的と言わざるを得ません。
さりげないシーンにさらにワンカット演出を施したフランク・キャプラの演出力量は並々ならないものがあります。
とはいえ、ゲイリー・クーパーという人は本当に顔が小さいし、背はすらっとしているし、心憎いほどに二枚目である。この人はこんなにかっこよかったのかと今更ながらため息が出るほどだ。そんな彼が、階段の手すりに乗って滑って見せたり、ベイブにラブレターまがいの詩をわたして、子供みたいに駆けだしてゴミ箱をなぎ倒し、人にぶつかりながら走り去っていく場面などの子供じみた演技がまた、くすぐったいほどにほほえんでしまいます。
なんせ、フランク・キャプラの映画には徹底的に憎たらしくなるような悪人はでてきませんね。ディーズに敏腕記者ベイブを差し向けるやり手の編集長も、結局、クライマックスではディーズの見方をして必死で弁護している。横領している悪徳弁護士も根っからの悪人には見えない。そして、キャプラ映画おきまりで、主人公を助けるのは労働者階級の人々であるところが、まさに真骨頂です。
確かに70年近く前の作品ですが、やはり見たい方は多いようで、劇場前は並んでいました。満員とは行きませんが、映画ファンはまだまだいるのだなぁと感慨にふけったりして。やっぱりいくらDVDなんかが普及しても映画はスクリーンで見ないとね。・・・
そうそう原題は「Mr. Deep Goes to Town」である。クラレンス・バディントン・ケランドの小説「オペラ・ハット」を原作にしているので日本ではこの題名になっています。ちなみに2002年にリメイク版として「Mr、ディーズ」という作品もあります
オペラハット | |
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