「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「オーストラリア」

オーストラリア

評判が分かれているようですが、私は、すばらしい映画だと思いました。
バズ・ラーマン監督作品ははじめてみたのですが、冒頭の導入部分,CGなどを多用した凝ったシーンから始まります。
ほんの少し、時間がループしたような展開から、物語のリアルタイムへ入るとそこからが本編。

宣伝フィルムの頃からの印象では壮大なオーストラリアの自然がスペクタクルとして展開するのかと思っていたのですが、そのあたりに頼っていないのがいいですね。バズ・ラーマン監督がオーストラリア出身ゆえに、自分ではいまさらなのかもしれません。
また、物語のポイントである、牛追いのシーンとクライマックスのゼロ戦の爆撃シーンという二つのスペクタクルシーンに頼らずに、物語をつむいでいったのは見事です。

見せ場であるスペクタクルシーンという大きな展開をすんなりとカメラを大きく引いて、フィードアウトして、あっさりと閉じながら次のシーンへとつなぐ、そこに時間の流れを挿入するという演出は見事といわざるを得ません。
細かいカットだけでなく、大きくパンしたり、ズームイン、ズームアウトを繰り返す大きなカメラワークも取り入れ、やや大根臭い二人の主演者の演技をカバーしたのが成功の原因かもしれませんね。

さらに、ハーモニカや映画「オズの魔法使い」の効果的な挿入など、細かい小道具や、シーンを無駄にせずに3時間弱の長尺なドラマに的確に取り込んで、見せていくという脚本の丁寧さ。ともすると、スペクタクルシーンに頼りがちになるこの手の超大作の欠点をカバーする個性的な構図による演出など、どれをとっても、監督やスタッフの意気込みの感じられる作品でした。

物語は実に、平凡な大河ドラマであり、あるひとが評するように、古き良き黄金時代のハリウッド映画を思わせると感じないわけではありませんが、あんな時代の単調な演出とはまったく違う、実験心あふれる演出は必見の価値有です。
ただ、物語の背後で唱えたいテーマである、オーストラリアでのアボリジニという原住民との物語や当時の移民たちの社会性などは十分に描ききれていない点は、ちょっと残念かもしれません。

質のよいスペクタクルな超大作として見るには十分なできばえだったと思います、