「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「縞模様のパジャマの少年」「色即ぜねれいしょん」

縞模様のパジャマの少年

「縞模様のパジャマの少年」
素晴らしい映画に出会いました。物語の展開の見事さ、カメラ演出の素晴らしさ、脚本のうまさ、どれをとっても一級品の傑作でした。
いや、それよりも、これほどストレートな反戦映画に久しぶりに出会った気がします。

主人公ブルーノが友達と飛行機のまねをして街中を走り抜けるところから物語が始まります。ある程度予備知識があったので、彼らがドイツ人であることは承知。
さて、家に帰ると、庭中が花に埋もれた家。それなりの階級のドイツ人であることがうかがわれます。

主人公の父がドイツ軍からのある仕事のために田舎へ引っ越すところからが物語の導入部なのですが、すべてではありませんが、カメラの視線が全体にかなり低いです。
引越しを告げられるところのシーンはほとんどテーブルの高さ。

さて、引越し先の家ですが、ベルリンの家と正反対にコンクリートの塊のようにつめたい概観。これからの物語を思わせるような意味もあるのかもしれません。
ここでブルーノは森の奥の有刺鉄線の向こうにいる1人の囚人服の少年シュムエルと出会うのですが、この本筋の物語を包む姉グレーテルや祖父、祖母、母、などのせりふを含めての描き方にも非常に繊細な演出が施されていて、物語が常に、反戦と、あるドイツの軍人家庭の物語を見事に映し出していくのです。

また、この作品、登場人物の目が演技をしています。
主人公ブルーノのクリクリした目が、必死で何かを探そうと視線を移すし、うつむき加減に見るシュムエル、はにかみながらも戸惑う視線の父などなど、この作品のストーリーテリングとしての視線が本当に重要な役割を果たしています。

さりげないせりふやシーンに無駄がなく、重い物語が展開しますが、背後にはジェームズ・ホーナーの軽やかなピアノ曲流れるところがまた好対照で素晴らしい効果を生み出します。

そして、ギクシャクし始めた家庭を立て直すべく再度の引越しを考え、ブルーナとシュムエルの最後の日がやってきますが、・・・ここからはぜひ映画を見てほしい。
いつの間にか軽やかなピアノ曲は、大きくうねるような音楽になっていることに気がつき、突然の雷、雨、そして悲劇へと一気にラストシーンを迎えます。いつの間にか、はらはらしながらも、涙が止まらないことに気がつき、戦争の怖さに気がつきます。
本当に完成度の高い、見事な映画であり、反戦の物語でした

色即ぜねれいしょん
なかなか評判である。
青春の一ページが見事に切り取られている秀作という評判もあって、見に行きました。
田口トモロヲ作品は初めてでしたが、前作「アイデン&テイティ」はなかなか評価も高いので、それなりに期待していたのです。

1974年ごろを舞台にした男子校に通う高校生3人のひと夏の物語。ちょうど、私の青春時代とほぼ同年代であり、かなりのめりこむかと思いきや、どうものめりこみきらない。どこか違う。
出てくるエピソードや舞台のほとんどがまさに自分たちの学生時代である。
にもかかわらず、全体の物語がひとつにまとまっていないために、ばらばらに懐かしいエピソードを体験してしまうのです。

物語は仏教高校に通う仲良し三人が夏休み、貧乏旅行を計画。目的は旅行先での。初体験であるなんとも初々しいし、誰もが覚えのある話である。
そして、すったもんだで、隠岐へのたびへ。そこでオリーブという女子大生に出会ったり、ヒゲゴジラという、当時、民宿やユースホステルにいた個性的な従業員と仲良くなったりと、楽しいひと夏を過ごす。

当然物語の中心はこのなのだが、戻ってからつづく話が、結局ひと夏の物語として終始させないために、やや分断されてしまう。

先に見た「縞模様のパジャマの少年」があまりにも完成度が高かったので、余計に見劣りしてしまいましたが、冷静に思いなおしても、ひと夏の甘酸っぱさが残るような素晴らしい作品と手放しでかけない映画でした。
なぜか女性に受けているのはなぜでしょうか?