南田洋子追悼番組、先日の「太陽の季節」に続いて、「十代の性典」を見る。
思春期の少女たちの揺れ動く心の状態を微妙な性演出も含めて、かなりストレートに描いていく。
製作された年代は1953年なのですから、当時の世相というか、性に対する意識がかなり当時としてはモダンに描かれているように思います。
ある高校を舞台に、家が貧しく、思わず同級生の財布を盗んでしまう女子高生房江を南田洋子、年上の先輩に「お姉さま」と慕う女子高生英子を若尾文子が演じるのですが、正直誰が誰かまったくわかりません。
どこか女同士のレズビアン的な危険な雰囲気を持たせながら、一方でそれほど思春期の女子高生が感受性豊かでこわれやすい微妙な存在であることを強調しています。
周りの男子たちはある意味作品の中では付録のような存在で、「太陽の季節」ほどにぎらぎらしたものは感じられず、この映画が女子高生のあまりにも壊れやすい心理状態を描くための作品であることを強調しています。
英子があこがれるかおりには、過去に男に辱められた経験があるようでその苦悩、さらに、当時の女子高生たちの憧れであったキリスト教へのピュアな感覚、処女性に対する異常なほどの潔癖な思想など、かなり時代色のある作品でした。
古風な作品とはいえ、今見てもかなりテーマがしっかりしていて、近年登場する妙な主題性のある作品よりよっぽど訴えかけに迫力のある作品でした。
もう一本が、マット・ディモンが実在の企業告発者を演じて話題になったスティーブン・ソダーバーグ監督の「インフォーマント!」をみる。
企業の不正告発とはいえ、二転三転する主人公の供述などでFBIをはじめ、世間を騒がせたある意味コミカルな主人公を描いた映画なのです。
なんといっても秀逸はあの「スティング」などの名作曲家マービン・ハムリッシュを13年ぶりに映画音楽に迎えたことでしょう。
軽快な中にどこかコミカルで、それでいて親しみのあるスコアは、物語の展開をテンポよく引っ張っていくので、シリアスな内容の中で、物語に引き込まれてしまいます。
主人公が真剣に自分が告発することで会社の首脳陣が退陣し自分が社長になれると幾度となく語る場面の面白さ、一方でひとつの告発が終わるとその言葉の端々に次のうそがちらりと出て、それでまた捜査陣たちがずっこけるあたり、見ていてほほえましいほどに楽しい。
一歩間違うと完全なコメディになりそうなところを、寸前でとどめて、まるで、次のうそはなんだろうと思わせるミステリー的な面白さまで生み出したソダーバーグ監督の演出は見事です。
しかも「ボーン・アイデンティティ」シリーズですっかりアクション俳優のようなイメージのできたマット・ディモンが演じるお調子者の主人公がなんとも親近感が沸いて、爽快です。
ハイテンポな中に、登場人物たちの心理描写も丁寧に描き、どこか憎めない登場人物や、どこか滑稽な周りの捜査陣たちの姿が本当にほほえましく、見ていて楽しいという言葉がぴったりの映画でした。