「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ミレニアム2火と戯れる女」「終着駅トルストイ最後の旅」

ミレニアム2

「ミレニアム2火と戯れる女」
前作同様濃厚なミステリーなので片時も物語から目を離せない緊迫感があります。
今回は、登場人物に説明のロゴが入るので、最初の部分の人物紹介は非常にスムーズにはいることができました。

物語は、前作で姿を消したリスペットの物語を中心に彼女にからんでくるミカエルの奮闘がストーリーの中心になっていきます。

偶然大金を手にしたリスペットは今まで住んでいるアパートを離れ高級マンションを購入し人々の前から姿を消します。各地を転々とし、かつての恨みのある後見人ビュルマンのところに忍び込みさらに脅しをかけて、自分に危害がこないように念を押す。その際にビュルマンのピストルを脅しに使い指紋を残したために、リスペットは後に惨殺されるビュルマンや少女売春の組織を追っていたミレニアムのフリーライターダグとその彼女の殺害の犯人にされてしまいます。

警察に追われながら真犯人を追うリスペット、そして彼女の無実を信じるミカエルの行動を通じて、しだいに明らかにされていくリスペットの父親の正体、そして不気味な金髪の大男の正体が明らかになっていきます。

前作よりもアクション性が強いためか娯楽色が強いのがこの二作目の特徴でしょうか。さらに三作へ続くようなわざとらしい展開で終わりませんが、金髪の大男(リスペットの兄)が消えたのと、父が瀕死ながら助かっているのが次への序章でしょうね


「終着駅トルストイ最後の旅」
すでに「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」などを発表し世界的な作家となって半ば神格化されているトルストイの晩年の物語を一人の若い秘書ワレンチンを通じて描いていく人間ドラマです。

映画が始まると一人の青年ワレンチンがこれからトルストイの秘書として赴こうとしているショットから始まります。すでにロシアの人々から、いや世界中の人々から敬意を持ってみられ、トルストイが唱える博愛主義であるトルストイ主義をおこなう団体も存在し、まさにトルストイが一人歩きしている時代、こんな偉人の秘書になることに夢のような希望を持つ主人公ワレンチン。

そして、いざトルストイの屋敷にきた彼はそこであまりにも人間くさい、一人の老人のようなトルストイの姿を目にします。しかし、周りを取り囲む人々はもはや彼を一人の人間より、一つの偶像としての象徴のごとく扱っている。妻ソフィアだけが彼の人間らしかった頃を知って接していきますが、それは周りの人々にとっては疎ましいものでしかない。そんな中で、愛というものの本質、恋、夫婦の絆などをソフィアから教えられ、また、トルストイとの夫婦の姿を見せられて次第に、本当のトルストイの姿に心打たれ始めていきます。

この作品は、こうした一人の偉人の晩年を描いたシリアスな人間ドラマにも関わらず、カメラが非常にダイナミックに動きます。
ワレンチンがトルストイの元へ向かうシーンでの汽車のショット、さらに駅のシーン、トルストイの庭でのシーンなど大きく大胆にクレーン移動させるカメラワークとちょっと小刻みなテンポの良い曲が前半部分の作品の展開を検診していきます。

常にカメラマンや汽車に囲まれる生活の中で、蚊をたたくことさえも気を遣わなければならなくなっているトルストイ、そんな彼がかんしゃくを起こすと、演説のレコードからクラシックのレコードの掛け替えたり、動物の真似をしておどけたりと巧みにいやすソフィア、それに応えて、子供のようにはしゃいだり、まるで恋人同士のように寄り添う場面も見せるトルストイのショットは本当にほほえましい。

しかし、そんな暖かいひとときもつかの間、すぐに周りから責め立てられ、著作権さえも国民のものにしてしまうようなサインまでさせられる。そんな夫の姿にヒステリックに訴えるソフィアに対し、周りはただ引き離そうとするばかり。
耐えきれなくなったトルストイは一人家を出ていきます。

しかし、長旅と高齢は彼には厳しすぎて、ついにある駅で倒れてしまう。そして、そこへ駆けつける妻、大勢の人々に見守られながら息を引き取ります。
汽車で去っていくソフィアに人々が歓声を上げて励ますラストシーンは本当に感動的でした。

シリアスなドラマをダイナミックなカメラワークで、それでいてほほえましいほどに暖かい夫婦の愛を描いたこの作品は本当に好感度のもてる秀作だったと思います。