「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「天使のはらわた 赤い教室」「壇の浦夜枕合戦記」「エロス

天使のはらわた赤い教室

「天使のはらわた 赤い教室」
日活ロマンポルノの傑作と呼ばれる曽根中生監督の一本である。
名美という女性を中心に展開するこのシリーズの特徴はやはり女の悲しい性であろうか。

冒頭、ブルーフィルムに映し出される一人の女性、彼女が教室で学生たちにレイプされるというエロフィルムを見る男たちの姿で映画が始まる。主演はこのフィルムを見てその女性名美(水原ユウ紀)に一目惚れしてしまう村木(蟹江敬三)。ひたすらこの女性を捜し、ようやく見つけた彼女はラブホテルの受付の女性だった。何とか呼び出し彼女と翌日デートの約束をするも運悪く警察に捕まり約束の時間にいけなくなる村木。

雨の中ひたすら待つ名美のショットがいとおしく、その後、やはり自分には不運しかつきまとわないのだとあきらめてバーで行きずりの男を誘ってホテルへ行く下りが何ともやるせない。

そして3年後に再会した名美はすっかり落ちぶれ、大勢の男に体を売りながら生きるまさに奈落の底に落ちたような悲しい一人の女の姿だった。

何とか助けようにも村木に明暗もなし、自分にもすでに妻子のある身となっている自分に助けるすべもない。一言「こんなところにいてはいけないでない」とと寂しげに叫ぶ蟹江敬三の姿を後ろ目に一人たたずむ名美。水たまりに映し出される彼女の姿が波紋に揺れるラストシーンは秀逸。

作品の完成度より、ぶつけてくるような女と男の情念、悲恋を荒削りに描いた傑作と呼べる一本だったと思います。

「壇の浦夜枕合戦記」
日活ロマンポルノ作品のおもしろいところはそのバラエティ豊かなジャンルの豊富さにある。
今回は平家物語の世界で描かれるエロスの世界である。まず添加を掌握した平清盛小松方正)が非道の限りをつくし女をものにしていく下りから映画が始まる。そして、そんな非道が許されるわけもなく、やがて義経が平家を滅ぼしてしまう。この義経を演じるのが風間杜夫。とらえた平家の女や宮廷の女たちを次々と家来達の宴会の席で手込めにし、やがて女として目覚めさせていくシーンを神代辰巳ならではのコミカルかついつもの歌声などでつづっていく様が楽しい。

風間杜夫扮する義経は助けた建礼門院に惚れてしまい、うわずった声で必死でくどく下りはコミカルそのもの、そして最後には義経建礼門院とめくるめく、しかもくどいほどの濡れ場シーンで締めくくっていく。

義経を演じた風間杜夫が何とも怪演と呼ぶにふさわしい熱演。さらに神代辰巳ならではの歌や遊びのようなシーンの連続。さらに首を切り落としたりするショッキングなシーンなども交え、義経建礼門院のとの濡れ場の最中、建礼門院が絶頂に達したところでウグイスの鳴き声などがはいるなど突拍子もない演出で笑わせてくれるあたりさすがに神代節炸裂で楽しませてくれる一品でした。

「エロスの甘き香り」
久しぶりの藤田敏八監督作品。
根無し草的な青年達のこれといった目的もないその日暮らしのたわいのない生活を淡々と、それでいてどこか時代の寂しさを醸し出すようなムードを生み出しながら描く藤田敏八青春ムービーでした。

突然悦子(桃井かほり)のところへやってきた浩一(高橋長英)、さらにあれよあれよと転がり込んでくる雪絵(伊佐山ひろ子)と昭(谷本一)、何というわけでもなく四人が同姓をし始め、暇をみてはSEXに興じる様は当時の若者の生活とは言えないかもしれないが不思議とそのイメージが浮かぶのはまさに藤田敏八ならではの不思議な感覚が生み出す世界である。

だれもかれもがしっかり土地についた生活をしているようにも見えず、といって将来の夢にむかっているふうでもない。売れない漫画家、優れた腕があるわけでもないカメラマン、いったい彼らは何を目的にしているのか、そんな風潮がそのままにじみ出てくる。

その場その場の会話に興じながら、空想の金で賭けポーカーを真剣にしてみたり、突然、豚の首を切り取ってもって返ってきたり、外人が残した犬小屋に寝てみたり、突然風呂場で手首を切った見たり、どこになんの生々しい生き様も見えない。そんな若者の姿を時に斜めの構図を使ってみたり、平坦にとらえてみたりしながら描く藤田監督の演出のリズム感は不思議な魅力がある。

結局、浩一は雪絵を犯し、怒り狂った昭に自分の恋人の悦子を与えその様子を写真に撮る。それで、何もかもがなぜかうまくまとまって、和気藹々と4人が食事をする場面から、講演でエロ写真を売る昭と浩一の姿で終わっていくのが何ともふしぎなエンディングである。

しかし、藤田敏八のこうした青春世界がやはり学生時代から大好きで、今回久しぶりに見た藤田節が心地よいひとときでした