「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リミットレス」「明かりを灯す人」

リミットレス

リミットレス
デジタル映像を駆使してめまぐるしいほどの細かい画面づくりでどんどんストーリーを運んでいく。そのハイスピードな映像に酔ってしまうほどの陶酔感があるが、いったんなれてしまうと非常に単調な繰り返しである。しかし、ストーリー展開が早いので、単調に感じ始めても物語を追いかけてしまう.B級サスペンスSFとしては申し分のないおもしろい映画でした。監督は「幻影師アイゼンハイム」のニール・バーガーです。

映画はいきなり金庫のようなドアが外からどんどんとたたかれているショットに始まる。まるで怪物が襲ってくるようなファーストシーン。カメラが引いてぐーんとビルを上昇すると一人の男が今にもベランダから飛び降りようとしている。主人公のエディである。

そして物語は少し過去に戻る。よくある手法であるが、ここから始まる物語は一見、SFであり、そしてサスペンスでもある。いや、欲を言うとアクション映画でもあるかもしれません。

エディは売れない作家で交際していたリンディとも別れ話がでて自暴自棄になっている。そんなとき元妻メリッサの弟ヴァーノンから奇妙な錠剤をもらう。人生をはかなんでいたエディはその薬を飲んでみると、なんと世界が変わったように頭の回転が異常に早くなる。そして、一気に小説を書き上げたり、女性を口説くのも天才的になったりするが、一晩でその効果は消えた。そこで、ヴァーノンのところへ薬をもらいにくると彼は殺されていた。電子レンジに隠していた錠剤を盗んでエディはその場をさる。

次々と薬を飲むとエディの世界はどんどん変わっていき、次第に地位と富が彼の元に。そして財界の大物カールと会い、さらなる高見へ上ろうとする。しかし不気味な男が彼をつけ始める。

やがてカールとも親しくなり、さらに上り詰めていくが、一方で以前やみ金融の男とかかわったために彼に薬を一錠とられ、彼にも薬をよこせと脅される。

やがて、薬が切れると記憶が飛ぶようになり、この薬が危険なことを元妻のメリッサから聞く。しかし、徐々に減らせば大丈夫であることに気がついて、今後のことも考えながら、金庫のようなマンションに住み、上着に薬をかくして生活するようになる。

仕事も順調、しかしある日顧問弁護士に薬を盗まれ危機になったとき、例のやみ金の男が薬をねだってくる。そして冒頭のシーンへと続く。やくざがただ襲ってきていただけというのはあまりにも一ひねりなさすぎるので残念ですが、まぁ、これはこれで流してしまいます。

すんでのところでやみ金の男を刺し殺し、危機を脱し、薬も取り戻し、1年がたつ。今や議員にまで上り詰めたエディにカールが会いに来る。

カールはこの薬を開発していた薬品会社を乗っ取り薬に秘密を知って、供給をストップ、エディを脅すが、もはやエディは薬の危険を克服、さらに薬なくてもわずか先の未来がみることができるようになるという、ハッピーエンドで映画は終わる。

途中にリンディがエディのピンチに自宅へ薬を取りに行って危険に会う下りや、カールがエディの力を借り合併を勧める巨大企業のトップもこの薬を使っていた等のエピソードも挿入され、てんこ盛りの物語構成は非常に充実感満天。しかし、あれもこれもと詰め込んだせいか、かえって抑揚のない物語になり、この秘密の薬のミステリアスなおもしろさが減少してしまった結果にもなっているのがちょっともったいない。

それに、悪人たちの人間が描き切れていないせいか物語に緊迫感が足りない。ドキドキはらはらする暇もなく危機を脱していくのである。

とはいっても、最初から最後まで息をつかせぬほどに楽しめる映画であるし、ちょっと、デジタル映像が鼻につくしこった映像を作っているにも関わらず映像演出が非常に平凡なので次第に単調になるのが物足りません。とはいっても、なにも考えずにおもしろい作品だったと思います。

「明かりを灯す人」
キルギス共和国の映画なんてみる機会が皆無に等しい。そんなレアな作品を今日はみる機会がありました。
監督はアクタン・アリム・クハドという人です。

あまりにも素朴な風景と素朴な人々、そして純朴ともいえるほどに美しい人たちを主人公にして、静かな小さな村に押し寄せてくる外部の権力と私利私欲にまみれたような人々との容赦ない摩擦が静かに生まれてくる様子が不思議な静寂と静かに流れる時間の中描かれていきます。

遙かに広がる美しい山々、広がる草原、牛やロバが人間と一体になって生活する景色がのどかでかつ不思議な安らぎを生み出してくれます。主人公のミスターライトが作業するたびにきらきらと光る電球さえもが不自然に見えてくる。

映画が始まるとそんな広大に広がるキルギスの山々を背景にぼろいけれどもしっかりと風を受けている風車をさわる男ミスターライトが映し出される。タイトルの後に彼は一見の老婆の住む家で電気メーターをいじって電気料を無料にしている姿が映される。

電気代さえもままならないこの村ではこういう電気泥棒が横行、ミスターライトは貧乏な家には無料になるように細工をしているのだ。しかし村長から逮捕され、あわやという時、中央政府が崩壊し政権が変わったために釈放される。家で待つ愛する妻と子供たち。ただ、男の子がいないことが唯一の悩みなのだ。
親友はマンシクといって、力自慢の気のいい男がいる。

そんな素朴な村に中央で議員に立候補しようとするベクシルがやってくる。中央のお偉方に媚びを売るベクシルに不快感を持つミスターライト。

ある日、その接待で呼ばれた席で、かつて親身にしているおばあさんがかわいがっている孫娘がいかがわしいダンスをし、お偉方の相手をさせられそうになるのに我慢できずあばれてしまう。
当然、後日痛い目に遭わされ、激しい風が吹いてきて、ライトの風車が狂ったように回る。それでも一生懸命自転車をこぐライトの姿を映して映画は終わる。

はたして、終盤で痛い目に遭わされて川に投げ込まれたライトはそのまま死んでしまったのかもしれない。ラストの自転車をこぐのは足の部分しか写していないのだから。

でも、谷にたくさんの風車を作って村の電気をまかなおうとする夢を負うライトの姿が本当に素朴で、人々が忘れていた人間としての生活、動物としての生活を思い出させてくれるような気がします。
ゆっくりと流れる時間を映画の中で体感できるそんな一本でした。