「放課後ミッドナイターズ」
いわゆるナンセンスアニメのジャンルには入る物語。竹清仁が描くCGアニメだが、とにかく宣伝フィルムを見ていたときからおもしろそうで楽しみにしていた作品である。
三人組の幼稚園児マコ、ミーコ、ムツコのキャラクターもとっても魅力的でかわいいし憎たらしい。ゴッドファーザーばりの三匹のウサギもなかなかの存在。そして人体模型キュンストレーキと骸骨ゴスの掛け合い漫才のようなコンビも楽しいし、タイムマシンが存在したりする設定もおもしろいのだが、いかんせん、ストーリーが乱雑でせりふのおもしろさやそれぞれのエピソードが全部ごちゃ混ぜになってしまっているのが本当に残念。
とにかくドタバタと展開するばかりで願いを叶える三つのメダルを集めるミッションもそれぞれに今一つ個性がないし、敵になるキャラクターももう一つ個性が弱いのである。
こちら側のキャラクターが独創的であるのに相手側が非常に弱いために対決のおもしろさがでないのである。
願いを一斉にいわなければいけないためにたまたま三人の悪ガキが「また遊ぼうね」と叫ぶラストの感動シーンはいいのに、本当にもったいない作品であった。もう少し脚本や構成に工夫を加えて、相手方のキャラクターも工夫すれば抜群の個性的なアニメになったろうに残念です。2007年の短編版を是非みてみたい。そちらの方がまとまっているのかもしれませんね。
「あの日 あの時 愛の記憶」
アウシュヴィッツ強制収容所から奇跡の脱出を成功した恋人たち。ところが彼らはその直後ふとしたことで生き別れてしまう。そして30数年、たまたま見かけたテレビ放送で死んだと思っていた恋人トマシュを見つけたハンナが奇跡の再会を果たした。という実話に基づいた感動の物語。
アウシュヴィッツでの脱走までの息詰まる駆け引きと行動を手持ちカメラでスリリングに描き、一方でニューヨークで暮らす1976年のハンナの姿を交互に交錯させながら描いていく。
ハンナは夫の祝賀会の準備のためにたまたま訪れたクリーニング店で放映していたテレビにかつて生き別れたトマシュの姿を見つける。そして過去を思い起こしながら必死で再度トマシュの居場所を探るハンナ。
やがてその居場所を知ったハンナは電話をし、死んだ夫と思っていた二人は再会することを決意。ハンナは夫の薦めもありトマシュに会いに行く。バスから降りるハンナを認めるトマシュ。映画はここで暗転してエンディングになる。
過去と現代を交錯させるという手の込んだ演出を施しているだけでなく、アウシュヴィッツのシーンは手持ちカメラを多用し、逃亡後のシーンもスリリングな演出を施す一方1976年のシーンはほとんどが家庭の中の室内シーンにとどめる。このテクニカルな映像演出がこの実話を映画作品として完成させている。
ストレートに感動を呼ぶような平凡な物語ではないのだが、映画として仕上げたアンナ・ジャスティス監督の手腕には敬服したいと思います。いい映画でした。でも水を差すようですが、さすがにナチスのユダヤ人迫害を背景にしたドラマはやや遠い記憶の彼方になってしまった気がしなくもないのが正直なところです。
「テイク・ディス・ワルツ」
これが男性監督が描いた作品なら何とも偏見に満ちたと酷評するのかもしれないが、女性監督の作品となるとちょっとその感性に驚いてしまう。全体がもしかしたらファンタジーなのじゃないか、主人公マーゴが夢なのではないかとさえ思えてくるような不思議な映画だった。
映画が始まると主人公マーゴがなにやらお菓子を焼いている。けだるそうにしゃがみ込む主人公に男性の影。
シーンが変わるとマーゴがどこかの観光地の取材をしていう様子。そこで一人の男性ダニエルと知り合う。そしてなんと彼はマーゴの向かいにすんでいるのだ。
自宅に戻るとマーゴにはやさしい夫ルーがいる。ことあるごとにいちゃつくマーゴとルーの姿に落ち着いたほほえましい結婚生活が見えるがどこかマーゴはルーに不満げな様子藻見える。一方でダニエルのことが気にかかる。
マーゴがダニエルにつかず離れずのシーンがやや長い上に後半のマーゴとダニエルとの不思議な画面からのシーンが妙にだらだらと長い。この作品、エピソードのバランスがちょっと悪いのである。せっかくの前半のまどろこしいシーンがようやくマーゴとダニエルがデートをする夢のようなファンタジックなシーンから後の部分と同じ長さになるほどにちょっと間延びしている。そのため、さらにそのあと30年後の絵はがきが届いてマーゴが家を出てその後さらに再び呼び戻されてマーゴの姉にきつい言葉をもらうシーンから後のエンディングまでがまた間延びする。
中盤でマーゴとダニエルがデートをするシーンが美しすぎるほどに幻想的な色合いと背景を用いているので実はこれは夢なのかと思えるのだが、そうではなくて二人は灯台で延々と回転するカメラの前で情事を繰り返す。やはり現実かと思わせるのは先ほど書いた姉による厳しい一言のシーンである。
そして、再び灯台に戻り冒頭と同じお菓子を焼くシーンからけだるそうにしゃがみ込む。ダニエルの影、一人で遊具に乗っているマーゴのショットで暗転する。
女性のやるせない欲望に揺れ動くファンタジーなのだろうか、その微妙な心の動きが女性ならではの感性で描かれる不思議と美しい映像作品だった気がします。惜しげもなく見せる全裸シーンや放尿シーン、平凡な不倫映画にしてしまわないこだわりのある演出は非常に個性的で楽しめる一本でした。