「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リオ・ブラボー」「奇跡のリンゴ」

リオ・ブラボー

リオ・ブラボー
何十年ぶりか、学生時代にみたきりの西部劇の名作を午前10時の映画祭で見直すことができました。

西部劇らしいシンプルそのもののストーリーを二時間あまり画面に引きつけてしまう。なぜそんなに引き込まれるのかというのは映画をごらんになるしか説明のしようがない。本物の名作とはそういうものなのです。

映画が始まると、酒場にディーン・マーティン扮するデュードがふらふらとやってくる。彼はアル中で、今夜も酒ほしさにやってきたのだが、そんな彼をあざ笑うようにならず者のジョーが銀貨を痰壷に投げ入れて取れといわんばかりに笑う。思わずしゃがむデュードに、痰壷を蹴りとばしてジョン・ウェイン扮するチャンスが登場。ジョーが銃を向けようとするのを一人の丸腰の男が押さえ、ジョーはその男を撃ち殺す。殺人で保安官のチャンスはジョーを捕まえ、牢屋に。

ジョーの兄貴バーデットは牧場主で金もあるが、金にものをいわせてやりたい放題の男で、当然、弟のジョーを助けにやってくるとふんだチャンスは執政官がやってくるまで踏みとどまる。

一気に物語の本筋に飛び込んで、後はクライマックスのバーデットとの対決まで淡々と物語が展開していく。駅馬車を率いてチャンスの友人パットがやってくる。その駅馬車アンジー・ディキンソン扮するフェザースがやってきて、チャンスとのプラトニックなラブストーリーが展開。一緒にきた二丁拳銃の若者コロラドが加勢に加わる。

ディミトリ・ティオムキンの名曲が流れ、物語はいよいよ佳境へ。まさに娯楽映画、西部劇の常道の展開にどんどん引き込まれていくのである。おきまりのキャラクターとしてひょうきんで頑固なスタンビィ老人なども登場、そんな設定さえもうれしくなってくる。

そして、ラストは当然ながら、派手な銃撃戦と、勧善懲悪が達成され、ぎこちないチャンスの恋物語も成就してエンディング。

芸術的な構図や演出などはない。ただひたすらにわくわくさせてくれるのである。これが古き良きアメリカ映画である。そして、これが大スターがスクリーンを引っ張っていた時代の本物の映画である。スクリーンの中にロマンがあった、そんな懐かしい夢の世界を見せてくれました。


「奇跡のリンゴ」
実話を描いた作品ですが、スクリーンにする時点で寓話的なファンタジーの視点に徹した演出をした結果、ちょっと好感な作品になっていました。予想以上に良かったです。もちろん、この手の苦労話につきもののエピソードもないわけではありませんが、それを差し引いてもまじめな作品になっていた気がします。

映画は主人公木村秋則の子供時代に始まる。おもちゃやラジオなどを壊してはバラバラにしてみないときがすまない、いわゆる奇行をコミカルに描いていき、彼の人間をまず描写、やがて、大人になって電機メーカーにつとめた後に、見合いで美栄子と結婚する。彼女が化学薬品に過敏であったことに端を発して、無農薬に挑戦するところからが物語の中心になるが、美栄子の過敏症が不治の病というほどのたいそうな描き方をしていないのはある意味成功だったと思います。これを、妻のために妻のためにと描いていくと非常に沈んだ映像になっていったと思う。結局、主人公の人並みはずれた探求心が生み出した一つの寓話だったという展開が良かったのです。

当然、貧乏になった上に、路上で金を取られたり、周囲の人々にのけ者にされたりというおきまりはあるものの、丁寧に、ときに地面に沈んでいくという特撮シーンなどを交えて、あくまで軽いタッチで演出していく。背景に何度も見せる巨大な岩手山のイメージも良かった。

さらに演じた役者それぞれが、仰々しくなく、あくまでさりげない演技でストーリーを語ったのも良かったと思う。

当然、クライマックスはリンゴの木に花が咲いて、やがて実がなるという成功談となるのですが、その後のところはあえて、ナレーションもせずに映像として余韻を残したのは大正解。

淡々とした非常に好感な寓話でした。いい映画だった気がします。