「ファインド・アウト」
何の変哲もないサスペンス映画なのですが、なんとアマンダ・セイフライド初主演映画ということで見に行きました。
しかし、彼女一人をひたすらカメラが追いかけるだけの物語で、よくもまぁ、ここまで引っ張ったものだと感心する一方で、最後まで見てしまったという自分にこれまた感心してしまった。
映画が始まるとアマンダ・セイフライド扮するジルが森林公園の中をひたすら歩いているシーンにタイトルがかぶっていく。そして、夕方に自宅に帰ると同居の妹モリーが試験勉強をしている。以前、ジルは森の中の穴に拉致されたが、すんでのところで自力で脱出。そのときのショックで精神病院にいたという設定。
ラッキースターという店での深夜のバイトの後、家に帰るとモリーがいない。その痕跡から自分を拉致した犯人が戻ってきたと判断したジル相手にしてくれない警察も宛にせず、は単身モリーを探そうとする。とここからが本編。
何の伏線も意味ありげなシーンもなく、しかもいくところいくところでジルの思うとおりの情報が得られ、どんどん犯人に近づいていくのだからシンプル。警察で唯一味方になってくれそうなせりふを言う新米刑事も、特に物語に絡んでこないし、カメラはジルの姿をひたすら追いかけていくのである。
そして、なんとラッキースターの常連の一人が犯人で、彼に電話をして、いわれるままによるの森林公園へ単身はいっていく。しかも、かつて拉致された穴に落とされるが、そこにあった銃で犯人を撃って、そとへ。犯人に灯油をかけて(て何でそこにそんな都合よいものが?)焼き殺して家に帰る。モリーは自宅の床下に拉致されていたらしく、無事保護され、なにをいっても妄想だと信じなかった警察へも真実を話さないジル。
エピローグとして警察へ×の印のついた森林公園の地図と拉致され殺された女性の写真が届く。その中にジルの姿も。
とまぁ、あまりにも工夫のないストーリーにあきれるのだが、アマンダ・セイフライドをひたすら見続けるだけの値打ちで十分な映画だった。こういうのもあるんだとある意味あきれてしまうけれど、損した気分にならないから不思議な映画です。
「欲望のバージニア」
色が美しい。非常に押さえた色彩演出で、煙るような1920年代の禁酒法時代のヴァージニア州フランクリン群の自然が描かれる。監督はジョン・ヒルコート
横長の画面に大きくとらえた緑の景色の片隅に、まるで懐かしい西部劇のような町が立ち並ぶ。
実在の三兄弟の物語を丁寧な演出と、しっかりとした画面づくりで描いていく映像は実に好感です。
物語はハワード、フォレスト、ジャックの少年時代。兄から豚を銃で撃てとジャックがいわれているが、気の弱いジャックは撃てない。それを兄が撃ち殺してタイトル。
体もごついし、喧嘩も強い兄二人に対し、小柄で優しい三男のジャック。三人は密造酒で商売をし、その地では仲間内でも一目おかれるている。
教会の娘に恋をするジャックは非常に繊細であるが、兄貴と違って、つい調子に乗って失敗をしてしまう軽い面を持ち合わせている。
こんな地に、ある日やってきたのは特別補佐官のレイクス。賄賂を要求するも断固断ったフォレストたちに執拗に妨害してくる。
三兄弟の商売と恋物語にレイクスの妨害が繰り返され、やがてそれが復讐劇へと発展していく様を描いていくのである。
シカゴからマギーという女性が流れてきて、フォレストたちの酒場で働くようになる。どことなく引かれ始めるフォレストのドラマも展開していく。
ある夜、レイクスが雇った男にフォレストは襲われのどを引き裂かれる。たまたま忘れ物をしたか、引き返してきたマギーに助けられる。この場面。店を閉めて、フォレストが襲われ、一人苦しむシーンに次第に雪が舞ってくる。そこへゆっくりとマギーの車が引き返してくるのが何とも美しい。
やがて一命を取り留めたフォレスト。ジャックは兄貴を見返すために郡を抜けてフロイド・バナーという仲買人と取引をし、大金を得る。そして、そのときフォレストを襲った二人を突き止め、快復したフォレストとハワードが襲う。
淡々と物語は進むが、色彩を押さえたデジタル映像が落ち着いたムードを決して壊さないし、レトロなムードに、どこか懐かしいような緑の景色がとにかく上品なのです。それに景色を有効に使った映像描写も実に美しく、派手な銃撃戦もやんわりと見せてくれるからいいですね。
レイクスの嫌がらせがやまない中、醸造所を拡大し、商売も順調になるが、調子に乗ったジャックは恋人のバーサをつれて隠している醸造所へ。それをつけられて、レイクすらに襲われ、友人で相棒のクリケットを殺される。
そしてクライマックスへ。
狂ったようにレイクスに迫るジャック、それを追って兄二人が駆けつけ、保安官等と銃撃戦へ。そして、レイクスは殺されるが、フォレストも重傷を負う。
エピローグは幸せになった三人が歓談しているシーンから、フォレストが凍った池に落ちたものの、肺炎であっけなく死んだというナレーション。そして、そのほかの人々のその後が語られてエンディング。
激しいドラマですが、画面づくりが落ち着いているので、上品に仕上がっていて、物語の展開も丁寧かつドラマティックなのが何とも印象深い良質の作品でした。
「コン・ティキ」
これもまた、実話を元にした海洋冒険映画です。
デジタルでとらえたものの、壮大な自然のシーンがシャープで美しく、まじめに展開していくドラマをきれいに引き立てていきます。
物語は1920年、氷原で遊ぶ子供たち。主人公トールの少年時代で、あわや氷の下に落ちるが助けられてタイトルへ。
時は1947年へ。ポリネシアのファツビバ島で妻リブとクラストールのシーン。そこで、ポリネシア人が南米からきたという証拠を見つけるにつけ、1500年前の出来事を再現すべく、筏でペルーからポリネシアを目指す冒険を計画する。
実話に基づくのであるから、動かせないところではあるけれども、クルーとして一緒に乗り込んだ仲間が一人も死なないのはうれしいですね。それに、よくある隔絶された筏の上でのそれぞれの人物の確執のドラマとか、極度の緊張で異常になる人物の描写などを極力少なくし、大自然の景色や出来事をシャープにとらえていくカメラワークが非常に好感。監督はエスペン・サンドベリとヨアヒム・ローニングという人で、この作品でアカデミー賞外国語映画賞、ゴールデングローブ賞のノミネートにはいっています。
危険を覚悟した冒険映画なので、おきまりの嵐に出会うシーンや鮫に危機一髪となるシーンもありますが、さりげないバランスで挿入されているし、あくまでスペクタクルでも人間ドラマでもなく、大自然の大きさに焦点を当てた演出が実にすばらしいのです。
いよいよポリネシアが目の前になったところで、夜の海に浮かぶ筏をカメラがゆっくりと俯瞰で撮り、空にあがっていくとやがて地球までとらえて再度筏のところへ。まるで大自然の中に抱かれるような終盤のシーンが実に美しい。
最後は、大環礁を波のタイミングで乗り越えて無事ポリネシアに到着してエンディング。最後に、トールの妻リブからの手紙を読むトール。そこには別れの言葉が書かれている。
実話ゆえにわかりきっているとはいえ、仰々しいスペクタクルを廃して、丁寧に見せ場をつないでいく真摯な映像づくりと最後にトールと妻リブの現実もしっかりと描いて、とっても作品全体を上質の映像に仕上げています。
エンドタイトルに記録フィルムが流れますが、これも実際のフィルムではなくてあくまでこの映画のシーンというのもまたストレートに受け入れてしまう良さがあります。
まじめで、品のよいいい映画でした。みてよかったです。