「アイス」
孤高の映画作家ロバート・クレイマーという監督の作品を初めてみる。フィクションでありながら、手持ちカメラの16ミリで描いていく映像は全く混沌としている。
物語は近未来、様々な革命に身を投じる若者たちの、もがく姿を描いていくが、背景は明らかに制作された当時のアメリカのベトナム戦争の縮図である。
しかし、冒頭に次々とテロップが語られ、テッドと呼ばれる人物が物語の主人公のように進むが、登場人物をほとんど把握できないし、解説にかかれているような、人種同士の組織の葛藤などはほとんど理解できなかった。正直なところ退屈だったのも事実である。
ベトナム戦争へのメッセージ映画であるように思えなくもないけれども、所々にまさに映画青年が目指した様々なメッセージが挿入され、その革命論のようなせりふには当時の独特に暗さが垣間見られる。
劇的なドラマでもなく、ある意味淡々と語られる混沌とした映像表現は、確かに個性的で、ただ振り回すだけのカメラになっていない点をみると、不思議なリズムを生み出していることも確かである。
しかし、しんどい。正直前半はうつらうつらしながらの鑑賞になった。しかし、これも映画なのである。
「マイルストーンズ」
まるでパッチワークのような作品だった。50人以上の登場人物の様々なエピソードが、フィクションなのかドキュメントなのかわからないような展開で次々と展開し、絡み合い、次のシーンからシーンへと組み合わされながら、それぞれが何度も繰り返される。
随所に写真のカットなども挿入され、本当のドキュメントカットなども挿入され、何気なくつながっていくような、一つの世界の様々な人々の様々な出来事が語られていく。
老婆のシーン、ホモセクシャルな男性、バーで歌う男、さめた夫婦のエピソード、目の見えない陶芸家、その恋人?友人。出産を控える妊婦、とても覚えきれず書ききれない。これは一つの時代を迎えた人類の映像なのである。
細かいカットの繰り返しは、不思議なリズムを呼んで、3時間以上ある映像が、不思議なテンポで胸に響いてくる。解説にかかれている傑作と評価するほど私の感性は優れていないので、そのあたりはわからない。しかし、これほどの長尺作品なのに、無駄が見えない。それはみてみないとわからない感覚であるが、その意味で、クオリティが高い映像作品なのだろうか。
とはいっても、正直長い。途中の休憩までで3時間ほどたった気がしたが、実際は2時間足らずだった。まぁ、こんな映画、二度みることはないけれど、貴重なフィルムに出会ったのかもしれません。