「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ドン・ジョン」「ランナウェイ・ブルース」

ドン・ジョン

ドン・ジョン
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが監督、脚本、主演をつとめた作品。
ポルノ映像による自慰を繰り返す、中毒のような主人公ジョン、しかしそのルックスから女にももてる。

フラッシュのようなカットを繰り返す導入部は、なかなかのオリジナリティな作品かと思われたが、いかんせん、終始、その感覚で映像が紡がれていくのは、何とも品がない。

お話のバランスも、バーバラという美女と出会う展開から、ジュリアン・ムーア扮するエスターに出会う展開への組立の配分が悪いために、それほど長くない映画なのに、やたら、後半しんどくなってくる。

結局、エスターの手慣れたSEXに、ポルノ中毒も吹っ飛んで、成長する主人公ジョンのシーンでエンディング。

確かに、言いたいことはわかるし、描きたい部分もわからなくはないが、全体に品のない映像が、ただ、下ネタにしか見えない、主人公ジョンのポルノ映像狂いの映画になってしまったのが残念な一本。


「ランナウェイ・ブルース」
これは良い映画でした。とにかく画面が美しい。横に長い構図の中に、雪景色の町並みをとらえ、通りのまっすぐな道の配置と人物、ネオンの光、彼方の山などが、バランスよく配置される。しかも、色彩も、押さえすぎず、際だちすぎない程良い色調で統一されて、品がある。

そんな美しい画面の背景に流れる、趣味のよいブルースの曲のマッチングの良さ。主演の二人うちに兄ジェリー・リーが描く絵が絡んできて、実に美しい映像表現となってスクリーンから伝わってきます。

物語は、弟フランクが語る空想の物語を、素朴なアニメーションで描くところから始まる。フランクのお話の中では兄ジェリー・リーは常にヒーローである。

夜、フランクの寝ているところに、片足のない兄ジェリー・リーが飛び込んできた。恋人のポリーと喧嘩をし、そのまま車で飛び出したが、途中で少年をひき殺してしまったという。兄を慕うフランクは、とりあえず、ジェリー・リーをつれてその場をでるが、目を離した隙にジェリー・リーは、自暴自棄になって、自分の不自由な方の足を拳銃で撃ってけがをする。病院に入院する兄のところにきたフランクに、兄は、自分を連れて逃げてほしいという。

時々、現在の物語の合間に、彼らの少年時代の物語が挿入され、幼くして、母に先立たれそのときの遺言で、二人は決して離れないことを言われたシーン、列車に飛び乗るときに、誤って兄は足を引かれてしまうくだり、フランクの恋人アニーとの別れなどが語られる。

警察の手が伸びてきたことを知ったフランクは、ジェリー・リーをつれて、アニーが住むエルコの町を目指す。

そこまでの様々なエピソードが、的確な長さで語られる下りが実にうまい。そして、そこに組み入れられる、フランクが語る空想の物語もまたうまい。

やがて、エルコの町に着くが、シェリー・リーの足の傷が悪化、そのまま死んでしまう。カフェで働くアニーの姿を見つめるフランクのカットでエンディング。過去を許し、愛する彼女の元に戻ったフランク、最愛の兄ジェリー・リーの死。兄弟の揺るぎない愛が丁寧に語られるストーリー展開もうましい、ジェリー・リーが少年をはねたことで、後悔の念を募らせる描写もうまい。

最後に、フランクの文字とジェリー・リーの絵で語られる物語は、ヒーロージェリー・リーの幸せな結末を語る物語でした。

周りに配置された中古車屋のクリス・クリストファーソンやアニー役のダコタ・ファニングなども見事な演技を見せ、主演の二人エミール・ハーシュスティーヴン・ドーフの演技を引き立たせる。

監督はアラン・ホルスキー、ガブリエル・ホルスキー兄弟である。

なかなか、見応え十分な秀作に出会った気分です。