脚本家小国英雄特集の一本。ご存じ、金田一耕助が活躍する横溝正史原作の映画化である。
全く、それぞれのエピソードが散逸しているという感じの支離滅裂なストーリー展開で、確かに、どろどろした殺人事件の物語なのだが、いったい何なのかわからないような物語の組立に、全く、まいった。
まぁ、名作、傑作を探して見る企画ではなく、あくまで古き映画を見るというレア感を楽しむひとときでした。
映画は、銀座のファッションコンクールから幕を開ける。そして、楽屋裏にいきなり、サングラスに黒ずくめの男が登場し、口を覆っているマスクをとると、化け物のような口。でたぁ!と思わせる演出は中川信夫である。
あとは、次々と、意味ありげな殺人事件が起こり、その影に、不気味な口の男、さらに、蛾の研究をする老人の存在など、いかにも横溝正史の世界であるが、いかにも適当な展開が、つっこみどころ満載。
しかも、当の金田一耕助は中盤あたりで突然登場、何気ない活躍の後、何気なく事件を解決して、ラストシーン。今までの展開などどうでもよかったかのような真犯人の登場でエンディング。
何とも、この適当感が楽しいといえば楽しい一本だった。量産されていた頃の場当たり的なヒットをねらった作品でしたね。レア物という値打ちで見る映画もまたよろしです。