「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「近キョリ恋愛」「蜩ノ記」「ふしぎな岬の物語」

kurawan2014-10-14

近キョリ恋愛
君に届け」がなかなかの佳作なので、ちょっと期待している熊澤尚人監督作品だったが、さすがに、俳優陣が下手くそすぎて、まったくはいりこみきれなかった。つまり、「君に届け」が、ちょっとした映画だったのは、演技者、特に、脇役が良かったのである。

ところが、今回は、主演のゆにを演じた小松菜奈以外は、あまりにしょぼいジャニーズ系中心に、全く物語を演じる力量のない素人ばかり。結果、薄っぺらい以前に、物語が流れていかないのである。

前半はまだ良い。主演のキャラクターの面白さ、オープニングの映像など、工夫も見られるからであるが、いかんせん、物語が本筋に入って、山下智久演じる教師櫻井とゆにのラブストーリーに進んでいくと、取ってつけたような登場人物的場や、そのほかの出演者の出番待ちの繰り返しに、見ていられなくなる。映像も平凡になり、主演のゆなのキャラクターもどんどん普通になっていくと、あとは、テレビのスペシャル版。

物語も、平凡だから、ラストシーへの面白みもない。とってつけたようなCGによる浜辺のカットでエンディング。結局、商売優先だけを考える湖とは良い作品作りであると理解していない製作側の貧弱な才能による企画という結論になってしまった。

「渇き。」の小松菜奈を生かせず、といって、ジャニーズ他に頼り切った配役陣、これではいけない。あまりにも表面面だけの作品作りは、出演者にもマイナスだし、客を馬鹿にしている。さすがにむりである。もっと映画作りを大切にして欲しいと思う。


「蜩ノ記」
まるで悠久の川の流れのごとき映像とストーリー展開。古き良き日本の礼節を描く、という小泉堯史監督の意気込みはわかるが、ストーリーテリングを無視した独りよがりの映像演出は、結局中盤まで物語がわかりにくい。なぜ、主人公が今の境遇になったかの藩の画策や次々と出てくる人名、役職の説明が難しすぎて、入り込めないのである。

中盤から、何気なく理解できてくるので、このあたりは原作のよさか、脚本のよさなのかもしれないが、淡々と進む物語は、確かに良質の時代劇としてしっかり作られていると思いますが、このリズム、このテンポは、体調悪いと、眠くなるなと感じてしまう。

映像が特に美しいわけでもないのは、ちょっと勿体無い気もする。きっちりとした細かい演出は好感なので、そこは見応えあるかと思えるのですが、もっとカメラにもこだわり、画面作りも凝ってみれば、一つの映像作品として結実してもいい気もする。底は監督の個性かもしれませんが、果たして、今の日本映画界に秀でたカメラマンはと聞かれて出てこない現状の中、この手の時代劇は厳しいのかもしれない。

不義の罪を着せられた主人公秋谷、10年の期間に藩の歴史を編纂するよう命じられるが、そこに、隠された謎を見つけた庄三郎は、詳細を調べ、真実を突き止める。そのことがきっかけで、秋田には切腹を免れる手段も出てくるが、たまたま起こった、秋谷が幽閉された村での農民の不満の問題から、真実を明らかにしつつも、今の藩の改革、行く末を進言した秋谷は取り決め通り、切腹に向かう。

男としての行き方、宮仕えに心身を捧げる潔さを、ラストシーン、切腹に向かう秋谷の後姿に表現して映画が終わる。

いい映画だが、ある程度の高齢者にしか感じ得ないリズム、感覚は、はたして、今の映画作りの求める行く末だろうか。「柘榴坂の仇討」とは一線を画すほどの作り方への思い、完成度が違うと思う。


「ふしぎな岬の物語」
モントリオール国際映画祭審査員特別賞受賞で、話題の成島出監督の作品であるが、さすがにこれはモントリオール国際映画祭のレベルの低さを証明するだけの作品で終わった気がする。

岬にあるカフェに集う人々のドラマを、笑と哀愁をこめて描いていく人間ドラマである。主演はカフェを経営する吉永小百合扮する悦子。吉永小百合自身が企画した作品だが、なんとも誰も彼もが精彩にかけるし、登場人物の姿が生き物として見えてこない。どれもこれも形だけの登場人物で終始するので、感情が入り込めないのである。

悦子もしかり、彼女を支え、慕う浩司、タニさん、そのほかさまざまな登場人物の個性がまったくべったりにしか見えず、面白みがないのである。

泥棒に入ったものの、悦子に見つかり、改心してパンを食べるキャラクターも、悦子を30年慕い、大阪に転勤を命ぜられて去るタニさんも、男と別れ村に戻ってくるみどりも、胃がんで死んでいく徳三郎も、そのほかさまざまな人間ドラマが交錯するはずなのに、どれも際立つものが泣く淡々と終わってしまうのだ。

ちょっと厳しく書きすぎたかもしれないが、それなりの作品を期待しただけに、落胆が大きすぎた。