「西遊記はじまりのはじまり」
久しぶりのチャウ・シンチー監督作品。有名な孫悟空の物語「西遊記」のその前談の物語。
映画は、とある水辺に暮らす村人のシーンから始まる。水の中に住む、魚の化け物のような妖怪に村人たちが襲われ、それを退治しようと立ち向かう頼りない妖怪ハンター玄奬が登場。しかし、手も足もでないところへ、女の強いハンター段が出てきて、一瞬で玉のような中に捕獲してしまう。
こうして、いかにも中国伝奇映画のようなオープニングで、派手に始まるのだが、中盤を越えたあたりから、少しえエピソードがくどくなるのが残念。
次々と繰り出される妖怪との戦いのシーンと、一方で、主人公玄奬に惚れてしまった女ハンター段の、乗り切らない片思いのエピソードが、ストーリー展開にブレーキをかけてしまうのである。
強烈な豚の妖怪を、いとも簡単に倒した孫悟空だが、実はこの孫悟空が妖怪王であり、玄奬をだまして、幽閉されていた岩穴から脱出し、段も含め、ハンターたちを皆殺しにしていくが、阿弥陀物に目覚めた玄奬によって、倒されてしまう。
そして、段が射止めた豚と魚の妖怪を従え、天竺への旅に出発するところでエンディングだが、なんと「Gメン’75」のテーマ曲が堂々と流れ、その曲に乗って、颯爽と旅立ってエンディング。
これから冒険物語が始まると言わんばかりのプロローグの話。ただ、若干、テンポが悪く、くどさが目立つのが本当に残念。
例によって、チャウ・シンチーの遊びがちりばめられているが、やや、物語づくりが無理があったために、しんどくなった感じである。
娯楽大作として期待しすぎたために、ちょっと残念だったが、普通に楽しい、おもしろい映画だった。
「ランナー・ランナー」
オンラインカジノの世界を舞台に、一人の秀才が、成功を夢見て、カジノ王にちかずくが、その男の悪に翻弄され、最後の最後に、見事抜け出すまでを描く金融サスペンスである。
監督はブラッド・ファーマン。製作をレオナルド・ディカプリオが努めている。
プリンストン大学の秀才リッチーは学費を稼ぐためにオンラインカジノに関わるが、すべて不意にしてしまう。しかし、そのサイトの不正を統計学で暴いた彼は、コスタリカにすむカジノのサイト管理者アイヴァン・ブロックに近づく。
ブロックはリッチーの才能を見抜き、仕事を任せて、成功の道を記していくが、実はブロックは、いずれ訪れる自分の破滅に備えて、リッチーを利用していた。
リッチーの友人たちも迎え、順風満帆に成功への道を進むかに見えたリッチーだが、実はブロックが巨大な詐欺を行っていることを見抜く。
賄賂が横行する中で、脱出も難しくなったリッチーだが、今度は自分が、稼いだ金を賄賂に使い、FBIとも取引をして、まんまとブラックを逮捕させ、自分はブラックのプライベートジェットで脱出。
FBIにはすべてを調べ尽くしたメモリーを手渡す。
とにかく、そぎ落とされたシャープなエピソードの積み重ねで、ハイペースで展開する物語は、みていてぜんぜん飽きがこないが、そのそぎ落とし方が、徹底しているために、かえって、単調なサスペンスになったともいえる。
とにかく、ラストは、ブラックの裏をかいて爽快に逃げきるリッチーの姿で大団円。ここに「華麗なる賭け」のような、してやったりという感情が、みている側に起こるべきはずが、余りに、全体のテンポが同じなので、せっかくの展開が、さらっと終わってしまったのが残念だった。
でも、オンラインカジノの世界を扱ったサスペンスとしては本当におもしろかった。