「大番 青春編」
四部策の第一作、監督は千葉泰樹である。
映画は、しょうわんはじめ四国の宇和島からでてきた赤羽丑之助、つうしょうギュウやんが相場の世界で頭角を現すまでを描いている獅子文六の小説の映画化である。
二時間近くある作品だが、素直におもしろい娯楽映画である。四部策を意識したのかどうか、的確なストーリー構成と展開でぐいぐい引き込んでエンディングを迎える。
満州鉄道の攻勢など史実も丁寧に織り込み、華族の娘にあこがれるあまり、ひたすら金儲けに走っていく主人公のひたむきで豪快な生きざまが見事に描かれているのは一見の価値あり。
原節子特集の一本だが、ほんの終盤にでてくるだけというのは、あくまで加東大介の映画だから当然である。
とにかくおもしろい。
「続大番 風雲編」
第二部は、いったん宇和島に戻ってほとぼりを冷ましたギュウちゃんが、再び東京に戻って、大儲けをしていく。
展開はほとんど同じパターンだが、今回は、戦争という暗雲の中、再び奈落の底に落ち、しかも恩師だった木谷の自殺で、どうしようもないところに追いつめてエンディングを迎える。
絶妙な調子良いコミカルなシーンがたくさん登場するのが、この第二部の特徴で、きめのところで原節子がスパイスのように登場する。
娯楽映画の王道のように痛快な展開とコメディタッチの色が濃い第二部をまた楽しめました。
「続々大番 怒濤編」
例によって宇和島に戻ったギュウやんは、当地の森家のふねで、大阪にやみ物資を運んでもうけるという商売に手を伸ばす。時は第二次大戦へと向かう時期で、株式市場に活躍の場がないと判断したためである。
こうして、例によって、その才覚で、大阪でもうける一方で、またまた女遊びの癖も衰えずという、ある意味ワンパターンの展開だが、これもまたおもしろいのは、加東大介の存在感の大きさと、淡島千景の引き立てによるものだろう。
今回も原節子は前半で、里帰りした席でギュウやんと言葉を交わす場面のみの登場で、常にギュウやんの心の支えとして登場。
やがて第二寺対戦の勃発と太平洋戦争突入というクライマックス、北浜で勝負にでるも、政府の報道統制のために、思うように情報が流れず、大損をして島に戻るシーンで円えぃんぐ。いよいよ完結編へつながっていきます。
とはいえ、このシリーズ展開はおきまりのパターになってきますがおもしろいですね。
「大番 完結編」
物語は、一気に戦後昭和24年へ。戦後景気で、細々と証券会社を運営しているギュウちゃんから始まる。そして、この最後の作品だけTOHOスコープだった。
ここで完結編となるが、物語のパターンは全く同じ。しかも、さすがにやや下品になってきるし、今までの女性をすべて出演させ、ゴルフ場建設まで話が飛躍してくると、手詰まり感が伝わってくる。
それでも、退屈せずに見れるのは、脇役陣の充実度である。一流の俳優たちがしっかりと脇を固め、ほんの僅かの出演でも画面を締めてくれる。
そして、主人公のマドンナ原節子、華族の奥様は、とうとう死んでしまうのだから、これしかないという感じである。
そして、精神的な拠り所を失ったギュウちゃんも、一時は落ち込むも再び相場師となって戻ってきてエンディング。
今回、シリーズ4本すべて一気見したが、退屈することなく最後まで観れたというのは大した作品だと評価できるのかもしれません。