「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画鑑賞「雪の喪章」「女の勲章」

kurawan2015-08-04

「雪の喪章」
話の展開が非常にスピーディーな作品で、悪くいえば荒っぽいほど豪快である。監督は三隅研次である。

物語は、金沢の金珀問屋を舞台に、昭和の初期、先代の社長の法事から物語が始まる。結婚したばかりの主人公が、女癖の悪い夫や、自分に思いを寄せる番頭、旧家らしいしがらみの中強く生きていく姿を描く。

女中と夫の不倫現場を発見する冒頭から、つぎつぎと不幸や事件が展開し、そのエピソードの羅列に見えなくもないが、これがこの作品の色であり、三隅監督の演出スタイルであることが最後にわかる。

女中の妊娠、主人公の自殺未遂、番頭の告白、家の火事、戦争が始まり、夫が出征、戻ってきたら、胸を病んでいて、まもなく死亡、かつての番頭が出世し、金沢に土地を購入、金箔問屋の再興へと段取りをするが、脳出血で急死して映画が終わる。

次々と波乱の人生を歩んできた主人公の、これからを伺わせるラストシーンの金屏風のショットがすばらしい。

雑に見える、男臭い映像が、怒濤の昭和を生きた主人公の一時代を見事にスクリーンに描き出し、金箔という繊細な品物を題材にしているにも関わらず、物語は激動に満ちている。

その迫力を堪能する一本で、重厚さと豪快さを兼ね備えた人間ドラマの秀作でした。


「女の勲章」
これはすごい映画でした。ものすごいテンポで展開する前半から中盤のすばらしさから、後半からクライマックスへなだれ込む絶妙のタイミングに、圧倒されてしまいました。監督は名匠吉村公三郎、脚本は新藤兼人、原作は山崎豊子です。

とにかく田宮二郎の圧倒的な存在感と、キャラクターに振り回されてしまいます。そして、作品のすべてを背中に背負っているような迫力でラストシーンまで息もつかせない。全くすばらしい俳優さんですね。

映画は船場の老舗の娘で、デザイナーである主人公式子と、彼女を取り巻く三人のデザイナーの女性と田宮二郎扮する商才に長けた男銀四郎の話である。

四人の女性のキャラクターの描き分けもしっかりしているし、吉村公三郎らしい、丁寧が画面づくりも光る。

見る見る事業を拡大し、その課程で次々と女性と関係を持つ銀四郎。一見、銀四郎に利用されているようで、実は自分の利害のために関係を持つ女たち、その小気味良い展開もおもしろいが、後半、式子が大学の教授と本当の恋に落ち、結婚を打ち明けられて、銀四郎が、金を要求することで式子を失いたくないという気持ちを露わにするクライマックスから、式子の自殺、霊安室につれていかれたあとのからの病室を見つめる銀四郎と、彼方に続く廊下の構図でエンディング。

畳みかけるラストシーンのすごさに、しばらく画面から目が離せない。適当に女と関係を持っているようで、実は本当に愛していたのは式子だという銀四郎の本音、微妙な男心が生んだ悲劇の現実にたたずむショットは、もう絶品である。まさに傑作。すばらしかった。