「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「海難1890」「杉原千畝」

kurawan2015-12-10

海難1890
期待していなかったが、思いの外しっかりと作られた作品でした。特に、前半、日本での海難シーンが素晴らしい。カット編集を巧みに使い、日本とトルコのシーンを交互に交錯させた細かいカット編集と、カメラワークで一気にスペクタクルシーンを見せ、そのあとのドラマも手を抜かずに描いたのは見事。監督は田中光敏である。

遊郭でのどんちゃん騒ぎのカットと、船が海難に会い、荒れ狂う様を描写する編集も素晴らしい。

三分の二ほどが、日本でのドラマ、そして終盤にテヘランでのトルコによる日本人救出シーンで大団円。

映像作りにも色彩にもこだわった画面も秀逸で、前半の大きく俯瞰で見せる海のシーン、小道具の色を重視したカメラ、人々の心の交流を、しつこくないように映像だけで描いたのが良かった。くどいセリフによる説明を極力排除した演出と脚本は、一見の価値ある。

クライマックスのテヘランでの脱出シーンをさりげない長さで処理した脚本もうまい。ここを適度の長さで収めたため、前半が生き、際立った。

人の真心、人の絆、人間としての心、どこか忘れかけている気がする素朴な感情に訴えたテーマもちゃんと伝わる。ちょっとした佳作だった気がします。見て良かった。


杉原千畝
こちらは本当に普通の映画でした。実在の人物をストレートに描いていくという点では、真面目な作品と呼ぶべきですが、逆に映画の面白さはないと言えばない作品です。監督はチェリン・グラッグです。

フィクションも交えているとはいえ、順番に史実として、杉原千畝の物語を綴っていく。
満州国からヨーロッパへ赴任し、そこでユダヤ難民にヴィザを発行するくだり。一方で、卓越した諜報力で、世界の情勢を予見し、日本の敗戦も進言するが、ご存知のように、歴史の真実は知るが如しの決着になっている。

特に英雄視した描き方になっていないのは、やはり、日本人監督ではないからだろう。ただ、映像演出はかなり凡庸で、モネの絵画そのままの構図を使ってみたり意味のない演出が見られるのは残念。

ただ、表面的にしか知らない杉原千畝の姿を知ることができた点では、勉強の意味で良かったと思います。唐沢寿明は頑張っていたと思います。