「神様なんかくそくらえ」
ニューヨークのストリートガールの刹那的な恋を描いて、東京国際映画祭でグランプリと監督賞を受賞した作品なのですが、要するに、昔風の言い方をすれば、乞食の物語である。監督はジュシュア・サフディとベニー・サフディである。
ほとんど、ドキュメント風の映像で、夜のニューヨークの気だるいような世界を切り取っていく。一方で、華やかなニューヨークがあるというこういう、底辺に近い世界を描いた意味で、一見の価値ある一本。
主人公ハーリーは恋人イリヤと、後がないような日々を送っている。ドラッグに溺れ、盗みを繰り返し、路上で物乞いをする。荒れたような映像は、彼らの荒んだ毎日をそにまま映し出すようであり、未来も見えない彼らの姿は、まるで、人類が週末に向かっているようにも見える。
喧嘩をし、疎遠になりかけるも、イリヤを愛してやまないハーリーの姿は、切ないほどに純粋に見えるのは、その他の景色があまりにみ虚しく見えるからかもしれない。
やがて、二人は高速バスでフロリダに向かうことにする。バスに乗り込んだものの、イリヤはハーリーが眠った隙にバスを降りる。そして、ニューヨークに戻り、ろうそくの炎を明かりに眠っていたところ、ろうそくが倒れ、火が彼の体にまわって焼死してしまう。
目が覚めたハーリーはイリヤがいないことに気がつき、バスを降り、ニューヨークに戻ってきて、またいつもの生活に戻ってエンディング。
出口がない。音楽の使い方といい、映像の気だるさといい、独創的な画面作りだと思うが、こういう路上生活する若者というのが、個人的に受け入れられないので、終盤まで入り込めなかった。作品の質の良し悪し以前の問題の一本でした。
「アンジェリカの微笑み」
マノエル・ド・オリヴェイラ監督が101歳の時、つまり5年前に監督した作品である。一人の写真家イザクガ、亡くなったばかりのアンジェリカという女性の写真を頼まれ、撮影に行くと、ファインダーの中で彼女が微笑んでいた。
一歩間違うとホラーになるファンタジックな作品で、マノエル・ド・オリヴェイラ監督らしい一本と呼べなくもない。ただ、出来栄えとしては、ちょっとテンポが悪いように思えるし、ラストの処理も、少し、バランス的に良くない。しかしながら、画面の構図、展開の処理など、さすがに巨匠の貫禄が見える一本でした。
夜、一台の車がある写真館にやってくる。アンジェリカという女性が亡くなったので、写真を依頼したいというのですが、主人が留守。困っていると、通りかかりの男が写真家を知っているという。そして紹介されたのが主人公のイザク。
イザクはカメラを持って、アンジェリカの家に行き、写真を撮りはじめるが、なんと、ファインダーの中に死んだはずのアンジェリカが微笑んでいる。
この日から、すっかり彼女に取り憑かれたようになり、夢にうなされ、時折彼女が見えるようになるのだ。やがて、お互いの愛はどんどん接近し、イザクの住むアパートの小鳥が死んだことがきっかけで、イザクはアンジェリカとともにあの世へ旅立つ。
ファンタジックホラーの装いといえばそういう感じで、香港映画にあったような展開でもある。オリヴェイラらしい映画であり、一味違うファンタジックなラブストーリーと思えるのですが、何か物足りなさを禁じえない映画でした。