「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ボーダーライン」「郵便配達は二度ベルを鳴らす」「拳銃貸

kurawan2016-04-13

「ボーダーライン」
全編、全く途切れることのない緊張感に包まれたアクション映画の傑作。少々物語は複雑に二転三転していくものの、その混乱をものともしない重厚なドラマ展開は、スクリーンに釘付けにされます。監督はドゥニ・ビルヌーブです。

FBIとSWATたちがが、ターゲットの建物に突入するところから映画が始まる。率いるのはFBIのエリート捜査官ケイト。突入して制圧したが、なんと壁の中から、人質になった人間の死体が次々と出てくる。そのショックに、誰もが打ちのめされるほどだったが、さらに離れた物置に仕掛けられた爆弾が爆発し、警官2名が死んでしまう。オープニングで一気に引き込む演出に、この作品のクオリティに圧倒されます。

そして物語はFBI作戦室へ。なにやら次の作戦の計画が練られているが、いつも目にしない男が座っている。そして呼ばれたケイトと相棒のレジ、作戦とは、麻薬密輸組織壊滅のための作戦で、今回の事件の黒幕を逮捕するためだと言われ承諾する。

作戦の指揮をするマットとともに現れたのが不気味な男アレハンドロ、さらに、いかにも強面の男たちも同行し、聞いていた場所と違うメキシコの街へともに向かう。そこは、街中で平気で惨殺遺体がぶら下がる一触即発の犯罪都市だった。そこで、1人の容疑者を逮捕し、アメリカに連れ帰るのだが、なんと、国境を出るまでに銃撃戦が起こる。あまりの展開の出来事にあっけにとられるケイト、しかも、法令で定められた市街での銃撃など当たり前に始めるマットたちに不審を抱き始める。この場面の緊張感は半端ではないサスペンスで、見事と言うほかありません。

そして知らされたのは、メキシコとアメリカ国境にトンネルがあり、そこを通って麻薬の組織が暗躍している。まず麻薬組織を混乱させ、大元のボスを呼び出す作戦なのだという。

光を有効に利用したカメラ演出が見事で、暗闇の中、自然と地平線の光の影に消える突入場面など、なかなか見せてくれるし、背後に流れる効果的な音響演出も緊迫感を増幅し、作品全体のドラマ性を引き立たせていきます。

あまりの出来事の連続に憔悴したケイトを慰めるためにレジが紹介した男も実はカルテルの一味で、危うく殺されかかりアレハンドロに助けられる。誰が敵で誰が味方か、なにが正義か秩序かわからないまま、トンネルの位置が確定し、洗浄資金も凍結されたカルテルのボスがついに動き始める。

当惑する中、作戦に参加したケイトだが、なんと、偶然、メキシコ側の悪徳警官と話すアレハンドロと遭遇、銃を向けるが逆にアレハンドロに防弾チョッキ越しに撃たれて倒れてしまう。

アレハンドロは、実は、すべてのカルテルを牛耳っていたボスで、その一部を今の組織のボスに奪われ、その復讐と、もう一度全てを把握させて秩序を安定させるために政府が考えた計画に乗ったのだった。このラストの逆転劇はかなりの話ではあるが、本当の秩序というものをテーマにした作品と見れば納得もいく。

呼び出されたカルテルのボスを利用し、さらに背後にある男のところへやってきたアレハンドロは家族もろともボスを倒す。

全てが終わった後、疲れ切ったケイトの元にアレハンドロが現れ、今回の出来事はすべて合法だったという書類に署名を迫る。そして無理やり署名させ、去っていく。一度は銃口を向けるケイトだが、撃つことができない。これが本当の秩序なのかどうか判断できなくなっている現実に直面したエンディングである。

確かに、レジの存在や前半のケイトの話から後半のアレハンドロの話に視点が移る展開、さらにマットの存在意義など、適当に済まされた人物描写はあるものの、作品のクオリティは、その映像表現のみならず半端なものではない。とにかく、画面に惹きつけられたままエンディングを迎えるのだから見事なものである。必見の一本と呼べる映画でした。


郵便配達は二度ベルを鳴らす」(1946年テイ・ガーネット監督版)
何度も映画化された名作サスペンスの代表的な映画化作品ですが、どのバージョンを見ても中盤が眠くなる気がする。もちろん、偶然から迷い込んだ主人公がたどる運命の物語として非常に良くできているはずなのですが、ミステリーといては少し形式の古さを否めないからでしょうか?

主人公フランクがヒッチハイクでたどり着いたのは、求人募集のチラシの貼ってあるロードサイドのレストラン。乗せてきたのは、のちに関係してくる検事、さらにその車を注意しようとやってくるのは、これも最初の犯罪に絡む警官。

フランクはそのレストランのオーナーニック雇われるが、ニックの妻コーラの美しさに一目惚れし、不倫関係になってしまう。そして、ニックがいなければという思いが募って、2人はニックの殺害まで計画。

ところがたまたま、犯行に及んだ日に、猫が感電して、偶然でニックが意識不明に。犯行を断念し後悔したものの、今度はニックがコーラに、店を売って病気の姉の介護をしてくれと頼んだことから、再度フランクと殺害を計画。酔わせたニックを車ごとがけから突き落とそうとする。

とりあえず成功はしたものの、なんと、ニックは保険に入っていたことが明らかになり、保険金殺人の嫌疑がかかる。しかし検事と弁護人のやり取りで、なんとか執行猶予になるのだが、レストランも繁盛し、コーラとフランクとの生活がうまくいくかに思われた時、車の事故でコーラが死亡。フランクに殺人容疑がかかる。しかし、これを機に、フランクのニック殺しが浮上し、有罪になるであろう展開でエンディング。

原作があるので仕方ないが、めくるめくようなストーリー展開が繰り返されるので、正直しんどい。偶然の運命からいつの間にか殺人罪で死刑になってしまうストーリーはまさにフィルムノワールの世界ではあるが、もう少しシャープに思い切って、エピソードを整理したら面白かったろうにと思えなくもないです。


「拳銃貸します」
結構面白い一本でしたが、ほんの少し、キレが弱いのと、展開が雑なので、B級映画の逸品という感じの映画でした。監督はフランク・タトルです。
殺し屋のレイヴンが、1人の男を殺し、何やら化学式の書いてある書面を奪うところから映画が始まります。階段に目の見えない少女がいたりと「レオン」を思わせるオープニング。

彼に仕事を依頼した男は、まんまとレイヴンを騙し、報酬の金を、盗んだ新札で渡したために、すぐにレイヴンは警察に追われる身になる。ところが逃げた列車に乗り合わせた1人の女は、レイヴンを追いかける刑事のフィアンセで、しかも、ある化学会社が毒ガスを作り日本に売ろうとしているという裏話まで知っていて、それにレイヴンの依頼人が絡んでいることが判明。

依頼人を始末するべく狙うレイヴンの話に、警察はレイヴンを追う展開、さらにレイヴンの依頼人と黒幕の社長も、女をレイヴンの女と勘違いし、命を狙うという複雑に絡み始める展開へ。

結局、レイヴンは依頼人のところにたどり着き、国の危機を救うために、毒ガスの取引の供述書を書かせた上に、警察に撃たれて、命を落としてエンディング。この辺りのラストの処理は、若干時代色を感じさせるしやや国策映画的に見えなくもない。結局、なんの話だったのというラストシーンの御涙頂戴がなんとも言えない映画でした。面白かったけどね。


ローラ殺人事件
オットー・プレミンジャー監督のデビュー作にして、傑作という呼び声のある映画を見る。なるほど、噂にたがわずちょっとした映画でした。とにかく、ストーリーの構成といい組み立てといい、本当によくできているし、さすがにオットー・プレミンジャーの演出が的を射ていてうまい。

地位も名誉もあり、有名なコラムニストでもあるライデガーが語る一人ごとで映画が始まる。間もなくこの家に刑事がやってくるという。ライデガーの愛する女性ローラが殺害されたのだ。しかも顔面に向けられた鹿撃ち銃という酷い殺され方。ライデガーは自分の自慢話及び、庶民を見下すような言葉を語りながら刑事を待つ。やってきたのは、敏腕刑事で有名なマイク・マクファーソン。彼は遠慮なくズケズケとライデガーに迫っていく。

2人でローラの殺された事件現場に行き、そこでローラの婚約者だと名乗るジェルビー・カーペンターと出会う。ライデガーが呼んだのだという。こうして、殺人事件の捜査と並行し、ローラの人となりが語られ始める。

犯人はシェルビーか、誰なのか全く見えてこない。

ローラは、その強引な仕事ぶりで、ライデガーに接近し、信頼を得て行った。そして、そんなローラをライデガーは目にかけ、社交界に出し、様々にバックアップして磨き上げたのである。やがて、ライデガーはローラに近づく男たちをことごとく蹴落としていく。

糸口が見えない中、ローラの家で眠ってしまったマイクは、ふと目をさますと、目の前にローラがいた。実は殺されたのはローラの知人でシェルビーとも親しかったダイアンだとわかる。こうして物語は後半に流れる。この手際良さが実にうまいのだ。

マイクは、次第にことの真相が見えてきていた。ライデガーがローラに送った柱時計と同じものがライデガーの家にもあり、忍び込んだマイクがその時計の隠し扉の裏をみるが何もない。そして、ローラの家の時計の隠し扉の後ろに凶器の銃を発見する。

ローラが犯人ではないことはわかっていたこともあり、ライデガーが犯人と確信する。ライデガーは、ローラがシェルビーなど他の男のものになることを恐れ、自分で独り占めにするべく殺害を計画した。しかし、たまたまローラの部屋でシェルビーと待ち合わせていたダイアンを撃ってしまったのだった。

クライマックス、マイクはことの真相をローラに話し、キスをして、明日ライデガーを逮捕する旨告げてローラの家を出るのだが、一足先に帰されたライデガーがそれを盗み聞きし、隠れて、ローラを撃つべく舞い戻るが、すんでのところでマイクが部屋に戻り、ライデガーを撃ち殺し、大団円となる。

本当に、よく書き込まれている脚本のうまさもさることながら、たたみ込むようなクライマックスの見せ方もうまい。これぞフィルムノワールという一本だった気がします。面白かった。