「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「大東京誕生 大江戸の鐘」「ハイ・ティーン」

kurawan2016-05-25

「大東京誕生 大江戸の鐘」
大曾根辰保監督作品と言われても、監督名がどうという作品ではなく、当時の大スターの総出演の松竹映画なのです。物語も、当時では常識の範囲の知識で見るべきなのですが、さすがに年月が経つと果たして物語が通じるのかという内容です。

映画は徳川幕府が明治に変わろうという過渡期の話です。隅々に散りばめられた様々な登場人物のエピソードが語られていきますが、歴史的な知識がある程度ないと、全く意味不明。でもそこを見るのではなく、登場人物を演じる、様々な俳優さんの当時の人気度や、私的な関係、ともするとスキャンダルまでを知った上で見ればこういう映画は本当に楽しむことができる。

もちろん、二世俳優と呼ばれる人もたくさんいらっしゃる。今を知るものには、現在活躍の俳優の父、母がさりげなく登場する。さすがに、 そこまで映画通ではない私には、おそらく半分も楽しめてないのでしょう。でも、映画産業全盛期の大作を垣間見る楽しみは実感できたかなと思います。


「ハイ・ティーン」
1959年作品ながら、今の学園ドラマで普通に扱っている学校での様々な問題が当たり前のように取り上げられていることに驚く。しかも、それぞれのエピソードがしっかりと無駄なく盛り込まれ、適当な処理も演出もなされていないところが見事である。監督は井上和男である。

問題児の多い高校三年のクラスを主人公が受け持つようになるところから映画が始まる。今の学園ドラマで当たり前になっているような、机の上で飛び回ったり、罵声を浴びせたり、先生をからかったりのオープニングにまず圧倒される。

嘘をついて、学校をずる休みする少女、さらに先生に勝手に恋心を持ったりする。継父に乱暴され妊娠する少女、母親の愛人を刺す青年、生徒に暴力を振るったと問題視される教師、など様々なエピソードを的確なタイミングで次々と描くドラマ作りは大したものです。

スポーツシーンも含め、カメラワークもなかなかで、ドラマ部分との対比も的確、しかも周りの登場人物も丁寧に描写され、物語に深みを加えていく。

ラストはおきまりの卒業シーンだが、PTAや理事の決定でクビになった主人公が松江に向かう列車の中でエンディング。結局恋人も彼の後を追いかけてこないあたりの辛辣さもなかなかでした。

軽い映画とタカをくくっていただけに、これは掘り出し物という一本でした。