「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「小さなスナック」「七人の刑事 女を探がせ」

kurawan2016-05-30

「小さなスナック」
こんなみずみずしい青春映画は、ここしばらくお目にかかれなくなった。時代が変わったといえばそれまでですが、作る側も妙にうちにこもった理屈に走るラブストーリーに走り始めたせいかもしれない。とにかく、夜明けの清々しさや、夜の帳の気だるさが、切なくなるような感覚を感じさせる秀作でした。監督は斎藤耕一です。

いうまでもなく大ヒットしたグループサウンズが元ネタですが、散りばめられる歌謡曲の数々に映像がかぶっていくハーモニーがとっても素敵で、甘酸っぱい青春の1ページが綴られる様は絶品です。

小さな町のスナックに若者たちが集まってくる。その中に一人、昭という主人公がいる。このスナックに一人でやってくる女性、美樹は昭たちのグループと一夜を遊び過ごす。夜明け、昭は美樹を誘ってデートをするが美樹は何処ともなく消えてしまう。

ところが数日後、あのスナックで昭は美樹に再会、次第に二人はお互い惹かれるようになる。しかし、美樹の家まで押しかけた昭はそこで、母親に実は美樹は結婚しているのだと知らされる。美樹は夫の元に行く途中、車で自殺を図り入院、そこへ出かけた昭の夫と出くわすことになる。

昭はどうしても美樹のことが忘れられず、昭とのことに悩む美樹は苦悩する。

物語の切り替えに常に流れるグループサウンズの曲が実に切ないムードを添えていくのがたまりません。横長の画面が美しい構図を生み出し、主人公が昭が恋い焦がれる美樹への思いを増幅していく。

昭はスナックで、美樹にこちらに来いと誘うが、美樹は最後の電話の後自殺する。昭はそのことを知らないまま、病院から、今日は行けなくなったことだけを聞く。昭は夜明けの街を歩く姿でエンディング。本当にこんな甘酸っぱい青春映画を作れなくなったなぁと嘆くのは私が歳をとったからでしょうかね。でも本当にいい映画でした。


「七人の刑事 女を探がせ」
大ヒットテレビドラマの映画版。監督は高橋治である。

一人の女性が殺された。その犯人探しのために、捜査一課の七人の刑事が地道な捜査で犯人を追い詰めていく様が正当なドラマで描かれていく。ある意味地味な作品だが大人のムードが漂うのと、やはりしっかりした役者が揃っているので、実にリアリティのある重厚感がたまらない魅力です。

手前と奥に配置した深い構図で見せる画面演出が、物語のシリアス感と緊張感を生み出し、次第に追い詰める犯人への緊迫感ある展開にどんどん引き込まれていく。

海外逃亡を阻止すべく、最後の証拠探しとなるクライマックス、時間との戦いという常套なラストですが、そんなストレートさが面白い。

懐かしい古き刑事ドラマの一本で、見応えがある娯楽作品でした。