「コルチャック先生」
さすがに名作です。素直に良かった。物語の始まりから丁寧に展開する細かいエピソード、さらにカメラが捉える少年少女たちの姿、主人公コルチャック先生の表情などの描写が秀逸。監督は名匠アンジェイ・ワイダです。
主人公コルチャック先生は二百人近いユダヤ人孤児を預かる施設の院長。人々からの人望もあるのだが、時は1939年、第二次大戦の空気がポーランドに迫ったくる時期で、経営の苦しい孤児院の窮乏を訴えに来たのである。
やがて、第二次大戦が勃発、この街にもドイツ軍がやって来て執拗なユダヤ人迫害が始まる。
細かいセリフの数々に散りばめられた戦争に対するアンジェイ・ワイダの考え方が非常にしっかり伝わってくるし、子供達の純粋そのものの表情ながらも必死で生きる姿の健気さもまたリアリティ満載で素晴らしい。
当然ながら、歴史の一ページを見据えるようなカメラワークもみごとだし、町の中が緊迫感を増していく姿を描いた構図の美しさも絶品。
最後は収容所へ乗せられる孤児たちとコルチャック先生のカットから、どこかの平原の中で霧の中に消えていくシーンでエンディングだが、そのあと、彼らはガス室で命を絶たれたというテロップが流れる。
ぶれない視線で描きながらもドラマ性と戦争非難をきっちりと盛り込んだ演出手腕が素晴らしい一本で、さすがに一級品とはこういうものかと思わせられてしまいます。良かったです。