アレハンドロ・ホドロフスキー監督23年ぶりの新作、これは全く変態映画だった。
物語はサーカスのシーンに始まる。テンポのよい音楽、サイケデリックな色彩、そして登場するのが金髪の少年、ホドロフスキー監督の少年時代の姿である。
例によって、シュールな展開と、自由奔放に映し出す映像表現は、彼ならではのオリジナリティであるが、時々、監督自らが影となって少年の背後から語る。
オペラ歌手で、常に歌っているようにせりふをしゃべる母、やたら厳格で、どこかサディスティックな父、そして、ダイナマイトの事故で両手両足が無い男たちとの絡み、軍事政権下のチリの、独特のぎこちない町等々を背景に、美学というより、やりたい放題な映像と物語で、ホドロフスキーの少年時代がつづられる。
石を海に投げていると、突然津波となって襲いかかり、大量の魚を浜辺に打ち上げるシーンや、カモメの大群が襲いかかる場面、消防士の父に連れ添ってバラック建ての小屋の消火にいくシーン、麻酔をかけずに歯の治療をさせるシーン、母と戯れて、真っ黒に塗りたくるシーンなど、妙な画面を数え上げたらキリがない。
ストーリーにリズムもテンポもないためか、途中と、終盤にやたら眠くなってしまった。
ラストは、父親が船に乗り、彼方に消えていってエンディング。父の死のイメージかどうか不明だが、恐ろしくシュールな世界満載の一本だった。