「青い芽」
石坂洋次郎の原作小説を映画化した鈴木英夫監督作品。短編ですが、青春のほんの一瞬をみずみずしい視点で描いたちょっとした映画です。
主人公は17歳の高校生。彼女のボーイフレンドがピッチャーをしている野球の試合を見ているシーンから映画が始まる。
不良学生たちとの絡みや、一昔前の感覚の両親とに軽やかな会話が、実にみずみずしく描かれる。
素敵な女性に取られたくないからとボーイフレンドとの結婚を決めてしまおうとする主人公に戸惑う両親や、ボーイフレンド本人の微妙な反応に、アッケラカンんと自分の意見を表現する雪村いづみ扮する主人公のキャラクターがとっても初々しい。
35分という短編ですが、爽やかにラストを迎える感じの良い映画でした。
「燈台」
三島由紀夫原作の舞台劇の映画化である。監督は鈴木英夫。二度目の鑑賞ですが、やはり全く途切れないシリアスなサスペンスは見事なものです。
若い頃にやってきた旅館を再び訪れた主人公が、かつて家族で訪れた時の物語を回想するという形式で、ほとんど旅館の部屋から外に出ないで物語が進む。
継母に恋心を抱く兄、そんな兄をからかいながら、父を守ろうとする妹。二人の男性を愛している継母の存在。そんなこととは全く知らない父の姿。
ドキドキしっぱなしのストーリー展開が、恐ろしく素晴らしい。
カメラが捉えるそれぞれの人物の表情、切り返すアングルとカメラ移動が生み出す緊迫感、その辺りは、今にも切れてしまいそうな緊張が最後まで全く途切れず、ラストシーンで不思議な余韻を残して終わる様は絶品です。
二度目の鑑賞でしたが、優れた映画であったことを改めて確認できました。